英語だと、部屋を暖めるだけの暖房器具が「ヒーター」、暖房の熱源で調理もできるのが「ストーブ」、だそうです。ナルホド。私は文句なしにストーブが好きです。やかんをかけてお湯をわかせばいつでもお茶が飲めるし、水蒸気が空気を潤します。何時間もかかる煮込み料理もストーブにのせておけば、お勝手のガスの口を長い時間占領せずにすみます。
先月昔ながらの石油ストーブを買いました。トヨトミのRS-29Eです。(品番のEは今年生産したという意味。去年のはD。)前に買って気に入っていましたが、ちょいとした事情で廃棄したから2台目です。(今は外出する時間がないためアマゾンで買いました。驚くことに数年前に家電量販店で買ったのの半額以下でした。)タテ長で場所をとらず、持ち手がついていて動かすのが楽。奥行きがあって上にヤカンやお鍋を載せられて、申し分ありません。このところすごく寒くて毎日一日中ストーブをつけていますが、おでんのお鍋をのせておいて、いつもアツアツです。おつゆが減ったらお湯を足し、食べたらタネを足して、かれこれ5日間ぐらいいつでもおでんのある暮らし。
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トヨトミ RS-29E のページ
同じ石油ストーブでもアラジンのブルーフレームは危なっかしくてやかんをのせられません。上に五徳のような出っ張りがありますが、小さくて滑りやすいのです(不安定)。去年やかんを載せていて、ちょっと体が触れたと思ったら落ちてしまい、私は足首を火傷しました。部屋が広くて誰もいないあっちの方に置いたままなら大丈夫でしょうけど、うちは昔の間取りで狭いので。
ガスストーブもやかんやお鍋の載る形があり、燃料の補充をしなくいいしいいんですが、やっぱり管が邪魔です。どの部屋にもガスの口があるわけじゃないし。だから灯油を買うのも灯油をタンクに入れるのも面倒ですけど、それでも石油ストーブが好きです。
一方、ヒーターといえばエアコンやファンヒーターですね。空気を乾燥させて、音もうるさい。うちは建物が古くて、そもそもエアコンを設置する場所がありませんが、東京ガスの温風ファンヒーターを使ったことがあります。つけて最初にガーーーッと熱い風が出るのはいいんですが、数分すると問答無用で弱い風に切り替わってしまい、手動で調節できないのが寒い日には不便でした。そしてバリバリの乾燥のすさまじさに閉口しました。おまけに3万円以上したのに次の冬に出したら壊れていました。
炎が出ない暖房器具は、おそらく火災防止の目的で求められているのだと思います。でもエアコンは季節の出し入れをしなくていいし、燃料の補給がいらないし、リモコン操作が便利だし、すぐに部屋があたたまるし、好まれる理由は他にもいろいろありそうです。私はちっともいいと思いませんが。私にはまるで冷房を含めた「エアコン信仰」のように見えます。
昨年親が臨時で老人ホームに入居した時、(当然ながら)個室内はオール電化で暖房は壁に設置したエアコンでした。1月末でしたからともかく暖房を入れ、すぐに暖かくなりましたが、親子とも1日で喉に直撃を受け風邪をひいてしまいました。 湿度計を見るとすぐに10%ぐらいになってしまうのですからたまりません。何とかしなければ、オイルヒーターかなあ、と探しているとこういう暖房器具を見つけました。値段は4万円を超えるのですが、評判がいいので即買いました。実際とても良いものでした! 今年も使っています。
遠赤外線パネルヒーター「談話室」
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日本アールシーエス(メーカー)のサイト
炎でもなく温風でもなく、遠赤外線であたためます。
360度全方向をあたためます。半分(180度)でも使えます。
それぞれに入切のスイッチと、250W/500Wの切替スイッチがあります。
触ってもやけどしません。小さい子供や老人のいる部屋にイイッ。
品物が届くとすぐに親の部屋に運びました。(重さは8キロ。)老人ホームの部屋は暖房なしでも10度でしたから、これ一つで十分でした。炎がなく風もなく音もなく、本体がじんわり発する熱だけで暖めますから、自然で気持ちのよい暖かさです。乾燥しないから寝ている間もずっとつけていられます。(温度調節は250W、500W、750W、1000Wの切替え。サーモスタットはなく、人が自分で切らないとずっとついたまま。物がかぶさった時だけ安全装置が動いて止まります。)
しかし職員さん達がまったく理解しないので困りました。居合わせた人に説明しても、他の人は知らないまま。全員を集めて説明するわけにもいきません。何十人もいる職員さんはみな若く、エアコンしか知りません。ですから室温を自分で加減するという発想がないらしくて、部屋の真ん中でこのヒーターがついていても消えていても目に入らない。部屋がちょうど暖かい状態なのに、温湿度計も2つ置いてあるのに、エアコンが消えているからとスイッチを入れていってしまい、私が訪ねて行った時に室温が30度を超えて寝ている親が真っかっかになっていた、ということさえありました。
どうしてこんなことになるのでしょう?
私が子供の頃の日本人はさまざまな火を使いこなして生活していました。うちではお炊事はプロパンガスでしたが、お風呂は石炭、こたつは練炭、火鉢は炭、あんかは豆炭、 庭では落葉や廃材の焚き火、そんな感じです。小さい頃から火を使う生活の中にいれば、子供は親のやることを見ていて火遊びなどしません。私は小学生でも火を扱うのが上手で、自分で工夫しながらとても少ない紙と薪で上手に炭をおこしたり、石炭を燃やしてお風呂をわかしました。火事や事故を起こしたことはなく、やけどをしたこともなく、危なかったことさえ一度もありません。うちが特別だったのではなく、私達の世代ぐらいまでは小学校でも、教室でダルマストーブを焚いて一日火の世話をするのは日直とかお当番の子供達に任された仕事でした。もちろん全国を見渡せば、家の中に炎がある時代には不注意による火災がたえなかったでしょう。でも圧倒的多数の人間は火を慎重に安全に扱っていました。
炎を使わない調理器具や暖房機器が普及して、おそらく火災は減ったでしょう。(失火が減っても放火は増えていないか調べたいところですが。)独居老人が増えた時代にはオール電化がいちばん安全なのはわかります。大きな地震を想像すればどの家にも火がないほうがいいに決まっています。しかし安全で便利な道具が人間をどれほど鈍感にしてしまったか。同時に人類が火を手にした太古の昔から受け継いできた火の扱いの伝承が途絶えてしまった。それはそれで、火災とはまったく別の次元で、非常に恐ろしいことではないかと思えてならないんですが。