お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2011年6月6日

ロン・ポール「他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ」



「他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ」
(原題 The Revolution: A Manifesto)
ロン・ポール 著
佐藤研一郎 訳
副島隆彦 監訳、解説
成甲書房(2011年3月)
1800円

原書はロン・ポールがアメリカ大統領選の候補者であった2008年に出版した「Manifesto」です。(訂正:正しくは選挙戦の間に書いたものを撤退後に出版したもの。)当時とても興味がありましたが、たぶん買っても読めないだろうと保留にして、未だにアメリカのamazonの買物カゴに入っています。その翻訳が出ました。

(それにしてもこんなに挑発的な邦題にしていいんでしょうか。腰巻き(帯ともいう)には「反・官僚支配、反・重税国家、反・過剰福祉、反・金融統制、M・サンデル教授らと戦う思想」とありますが(はあ、それで私には「熱血教室」の本が面白くなかったのでしょうかネ)、でもロン・ポールは別にサンデルを相手に戦っていないでしょうが......。このあたりの訳者のノリは、さすが副島先生のお弟子というべきか。)

大統領選の「マニフェスト」ですから当時のアメリカ合衆国における問題点と解決案です。(いわゆるリーマンショックの前ですが、サブプライム・ローンの破綻については言及されています。第三章のお金の話は圧巻です。)読んでいて意外だったのは、書いてある内容を私が(ある程度)理解できることでした。それは私がアメリカ社会やアメリカ政治について勉強したからではなく、アメリカから日本に影響の及ぶ事柄がかつてないほど多かったり、自分をとりまく環境を含めて日本の状況がアメリカとかなり似てきたからではないかと思います。そうとうヤバいかもしれません。何しろ問題は未だ何一つ解決していないのです。

「Stop Dreaming」は「A New Hope」と並んでロン・ポールの一番有名なビデオでした。再び埋込みます。過去〜現在の発言、予備選での発言が収められています。(ついでに、民主党予備選でまともなことを言っていたのはオバマではなく Dennis Kucinich。)本書はこのビデオに出てくるような事柄を詳しく述べたたもの、ということです。

ロン・ポール議員の発言集『Stop Dreaming』(日本語字幕埋込版)



さて、ロン・ポールはテキサス州選出の共和党下院議員で、彼の大統領選挙戦は「Who Is Ron Paul?/ロン・ポールって誰?」というキャッチフレーズで始まりました。それくらい全国的な(というか合衆国全体では)知名度が低く、メディアも泡沫候補扱いをしました。しかし予備選の間にぐんぐんと支持を集め、共和党のディベートでは圧倒的な存在感を示し、日本にいる私さえ知ることになりました。残念ながら本選に進むことなく退きましたが、その後は専門の金融問題に関してメディアへの登場が格段に多くなり、「若くて高学歴の浮遊層」を中心に熱烈な支持者を増やし続けて、先月ついに2012年の大統領選に立候補を表明しました。(現在ペイリン、ロムニーより支持が高いとのことです。)

ロン・ポールは、例えばアメリカは戦争をやめ、米軍は世界から撤退するべきと主張し、日本人の質問に答えて日本に対しても自分の国は自分で守れと言います。この人の言うことを知ろうとすると、「保守政治」「小さな政府」「福祉国家」「所得税」その他いろいろな言葉の本当の意味がはっきりしてきて、考え方の修正を迫られる気がします。ロン・ポールの仲間であるピーター・シフは311の大災害に際して「日本は米国債を売って復興にあてるべきだ」とYouTubeでメッセージを公開しました。彼らに近い「ティーパーティー(茶会党)」が日本のニュースに出てくるときには、まるで極端な右翼のような印象を抱かせますが、騙されてはいけません。第一にティーバーティーはいろいろなグループや個人の集まりであって政党ではなく、第二に「保守派」であり「頑固な憲法主義者」なのであって、憲法軽視もはなはだしいネオコン右翼とは全く思想が異なるからです。

バラク・オバマは黒人だという理由で暗殺を心配されたものですが、ロン・ポールは実際に FED、IRS、軍産複合体などに対して物凄いことを言ってきましたから何倍も心配です。(あれだけ言って殺されないのは裏でつながっているからだ、という人もいましたが。)日本のテレビが彼をとりあげることはとうぶんないでしょうから、ぜひネット上の演説を聞いたり(字幕付きもあります)本を読んだりして、その考え方に触れてほしいと思います。そして殺されないように、皆で見守りましょう。
(追記:2011/7/29)
ロン・ポールの前回の選挙戦がどういうものであったか、感動的なドキュメンタリーがありましたのでリンクを貼ります。(2時間近いもので日本語字幕がないのですが、多くの人に見てほしいと思います。涙なしには見られません。当時は私も途中から同時進行で追っていましたから、ああそうだったなあ......などと思い出してしまいます。)

● FOR LIBERTY: How Ron Paul Revolution Watered The Withered Tree Of Liberty(自由をもとめて:ロン・ポールの革命がいかに自由という枯木に水を与えたか)


あらためて思うのですが............アメリカ合衆国は(偽)ユダヤ人にのっとられて、(偽)ユダヤ人の(偽)ユダヤ人による(偽)ユダヤ人のための政治がずっとおこなわれてきた結果、国も民もボロボロになったということなんですよね、実は。その国家存亡の瀬戸際に「こんなのは間違っている、合衆国憲法にてらして考えよう、建国の父たちの声をきこう」と大正論で訴えるロン・ポールが現れたからみんなビックリしたのです。さらに驚くのは、自身が大統領選を退いた後は「第三政党に投票しましょう」と、ラルフ・ネイダーなど二大政党以外のリバタリアンの候補者達がメディアの前で演説する場を作りさえしました。共和党のディベートは今見ても大傑作で、そこで目を覚ましてしまった人達は彼が大統領選を退いても終わりにすることなどできず、彼の提唱する「自由への戦い (campaign for liberty)」を続け、一つはティーパーティーへの流れを生み、大成功を遂げたわけです。ロン・ポールの大統領選は他の候補者と異なり、たった一人で国中に大きな覚醒と運動をもたらしました。広告代理店など使わない本当の草の根だけで。こんな選挙は世界中でも他にありえないでしょう。(そういう動きを一切報じない日本という国は......のっとられているんでしょうネ。)


● デイリー・ポール
もしかしたらロン・ポールの公式サイトよりも有名な老舗のファン・サイト。2008年の大統領選でロン・ポールを知った一市民のMichael Nystromが始めたサイト。ロン・ポールの毎日の最新情報が載っており、議論も盛んです。(現在はサイトにアクセスを載せていませんが、調べてみたら毎日2万〜3万近いアクセスがあるようです。)

● ロン・ポール・ドットコム
こちらも公式サイトよりも有名かもしれないファン・サイト。「デイリー・ポール」と同じく、70才を過ぎたテキサスの下院議員の毎日の動向を追い、支持者間で議論しているサイトに世界中から毎日数千〜1万以上のアクセスがあるとは、どういうことでしょう? 勿論ほとんどは合衆国内ですが、15%が先進国を中心に、ヨーロッパ、日本、ロシア、中国、中東……海外からで、累計207ヶ国からのアクセスが記録されています。とりもなおさず世界中がアメリカから何らかの影響を受けており、たいていの国の人達は「何とかならないか」「もっと良くならないか」という思いがあって、ロン・ポールに関心を抱くのではないでしょうか。(大統領選に出ることを発表した日には1日で7万アクセスを超えたそうです。ファン・サイトで、ですよ。)

このブログでの関連記事
● すごいアメリカ人(ロン・ポール……2008年12月14日付
● ロン・ポールの続き......2009年1月4日付

(ron paul) (ron paul 2008) (ron paul 2012)

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