お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2009年3月1日

同窓会——特別な幸せ


写真は私が撮った下手くそなスナップの一枚。2月1日に催された高校の臨時同窓会のもようです。でも見ているうちに、そのまんま教室の休み時間みたいに思えてきました。適度にピンボケで、全員がおじさん・おばさんであることを忘れます。

高校時代の漢文のH先生が昨年帰国しました。先生は学校のいわゆる「名物教師」でしたが、ここ10年ほどは中国の大学で教鞭を取っていたのです。ということで有志が立ち上がり、120名余りが集まって、「H先生を囲む集い」という3学年合同の同窓会とあいなりました。

幸せな思い出があるのは幸せなこと。それを誰かと共有できるのはさらに幸せ。そして高校時代を懐かしむ私が特別に幸せだと思うのには二つの理由があります。

ひとつはKくんの8ミリ映画。彼は高校1年のとき同じ組でした。自分のカメラを持っている人など写真部員以外めったにいない時代、Kくんは学校で8ミリカメラを回していたのです。運動会や文化祭などの行事だけでなく、朝の登校風景、お昼休みや放課後にみんなが集まる中庭など、ふだんの生活もたくさん撮っていました。教室で上映会を開いて見せてくれたこともありましたっけ。フィルムはたしか一巻3分。音はありません。カラーもありますが、とても贅沢なものでした。3年間でいったいどれだけ撮ったんでしょう。1970年代はじめのことです。

数年前にKくんはそうしたフィルムを編集しデジタル化しました。同期会のサイトを立ち上げ、そのムービーを載せたり、DVDに焼いて希望者に配布しているのです。これってすごいことです! 写っているのはとうぜん彼のクラスと学年が中心ですが、自分が写っていない上級生も、当時の生徒のようすや共通のイベント、今では壊されてしまった中庭や校舎の風景に、懐かしくて涙が出ると言います。当時のKくんには想像もできなかったでしょうが、今では私達全員にとってかけがえのない宝物になりました。(私は彼の好みのタイプじゃなかったらしく、たまたま端っこにチョロッと写っているのがいくつか。合計で何秒にもなりません。しかしいうまでもなくムービーは写真とまったく違います。ほんとに夢のような気がします。)

もう一つは1999年と2000年に発表された群ようこさんの小説です。世間の評価は「かもめ食堂」に譲りますが、自身の高校生活を描いた上下2巻こそ(先輩の言葉を借りれば)奇跡のような宝です。私達はあのまんまの世界に住んでいました。彼女は私より一つ上ですから、ちょうど8ミリ映画とは逆で私は出てきません。でも大笑いして読みながら上級生の姿を次々に思い浮かべるし、同じ先生に教わったし、中庭で主人公の背景にいたり廊下ですれ違っている自分を感じるのです。それは誰にとっても同じで、この小説は同窓生それぞれの記憶にぱーっと眩しい花吹雪を降らせたでしょう。さらにみんなの気持ちを駆り立てて、同じ学年のHさんや下の学年のKくんが同窓会とは別の同期会を作るきっかけとなり、人々をふたたびつないでいます。こんどの臨時同窓会もこの小説の時代にいた3学年で行なわれました。

こんなふうに高校時代の思い出をムービーと小説で普遍化し共有できるなんて、日本中で私達だけじゃないかと思います。(假屋崎省吾さんは来るのが2年遅くてお気の毒デシタ!)

さて、2月1日の会には主賓のH先生に加え、K先生とK’先生もいらっしゃいました。はじめにそれぞれお話をしてくださったのですが、聞いていると三人とも「長い教師生活であの学校のあの頃が一番楽しかった」とおっしゃるのです。後でクラブの顧問だった現代国語のK先生に確認すると「そりゃあそうでしょう」と笑うのでした。なんだか不思議な気がしました。

というのも、私は高校時代(とくに前半)を本当に楽しく過ごしたんです。じっさいには笑っている時間より怒ったり嘆いたりフテくされていたほうが多かったかもしれませんが、一生懸命に力いっぱい生きていたと思います。学校中にすてきな人がいーっぱいいて、学校中に友達がいて、意地悪な先生もいやな奴も知らない人もひっくるめて学校全部を自分のものだと思っていました。その記憶は、しだいに友達と離れて、いろんなことが上手くいかなくて一人ぼっちだった時代にも私の支えでした。ですからどんな有名人の話を聞いても自分の高校時代のほうがずっと面白いと思ったものです。でもそれを言うと「誰でも自分の時代が一番だと思うもの」と、したり顔で返されるのがオチでした。私が一人で思い出を美化してるわけ? でも今、当事者たる人達が集まると…………やっぱりみーんなあの頃が好き。自分がいたのはそんな場所だったのだと改めて思いました。(2月6日)

会場には誰が持ち込んだのか、生徒手帳や喫茶店のマッチなど「思い出の品々」が展示されていました。その一つ、1972年の文化祭のポスターです。(群ようこさんも覚えているはず?)これは2年のとき私が描きました。全部をまかせくれたから好きにやり、片面がポスター、もう一面がプログラムで、文字は活字を使わず全部手書き。それを折り畳んたものを各人に配布しました。文化祭の間には道ばたに捨ててあるを見て少ししょげたものです。でも35年過ぎて、楽しかった思い出の一部として大事にしてくれる人達がいるのを知りました。大きな集まりのたびに誰かが持ってきてくれます。不思議な気がします。ありがたいことです。(やっぱりそちらの道へ進むべきだったのでしょうか…………)

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