お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2007年10月31日

パブリック・サキソフォン




西荻(西荻窪)の「Terra」というライブスポットへパブリック・サキソフォンのライブを聞きに行きました。パブリック・サキソフォンは四人囃子(よにんばやし)の森園さん(ギター)岡井さん(ドラム)の二人と、大西さん(ベース)、石井さん(キーボード)からなるバンドです。初めて行ったのは今年1月で、高校の上級生でミュージシャンのらいおんめりいとOさんと一緒でした。今日は二回目。小さなお店のリラックスした雰囲気の中、すっごい腕の人達が好きな曲だけやっているところに「大人の世界」を感じます。一曲目は(私が大好きだった)Traffic の「Feeling All Right」、一つとんで、私にとっては Blues Project でおなじみの「Walking Blues」、という具合でスタンダードが主です。子供にはちょっと無理かもね、なんちゃって。

岡井さんと森園さんは高校の2年先輩です。当時すでに音楽活動を始めていて、いつも素敵だなあと眺めていたものです、というか、憧れでありました。(岡井さんのお姿を見かけた日には生徒手帳の日記欄にマル印を付け‥‥‥‥木曜日が多かったっけ‥‥‥‥とか。)とはいえ四人囃子のコンサートはごく初期に一度行ったきりで、日本のロックの黄金期を知らないのですから、ファンの資格はありませんね。その点、今日一緒に行った高校の友達のMちゃんと彼女の短大時代のお友達のNさんはあの時代の音楽シーンのインサイダーで、生き証人みたいな人で、岡井さんとも親しい交流がありました。だから彼女達、20年ぶりのご対面とあって、ライブ後は楽しいご歓談とあいなりました。私もご相伴にあずかったというわけです。

実は私達の高校時代とは群ようこさんの小説「都立桃耳高校」です。(とくに上巻では、私もMちゃんと一緒に台詞のないその他大勢のエキストラとして周辺をウロウロしているはずなのです。)そこでは「岡井さん」は主人公の憧れであり、漢文の「本多先生」と並んで何故か本名で登場する2人のうちの一人です。前から興味があったので岡井さんにそのことをきいてみると、「変な感じ」で、「名前だけ使われているような感じ」で、自分のことには思えなかったそうです。へえ〜、そういうもんなんですか。また、当時の岡井さんの家はMちゃんの家の近所でした。ビックリまっ黄色のオシャレな建物だったのですが、とっくに建て直したし、今は別の人が住んでいるそうで、時の流れを感じました。

特記事項は、岡井さんが「50を過ぎて諏訪太鼓を始めた」ということです。ドラムをやってきたから有利かと思ったら勝手がまったく違った等々。他にも和太鼓を始めたミュージシャン(複数)がいて、近々(12月か1月)皆でお師匠さんと和太鼓のライブをやるそうです。私としては少なからず楽しみです。日程は四人囃子のオフィシャルサイトに出ますから、ときどきチェックを入れなければと思います。(10月30日)

四人囃子のオフィシャル・サイト

2007年10月29日

驚きの封筒


大手町にある逓信総合博物館の展覧会の入場券は郵便局によく置いてありますが、こんどもそこでもらってきたのか記憶は定かじゃありません。たぶん「絵封筒S」という展覧会の名前から、先日Iが話してくれた「おじいさんの封筒」を連想して、興味を感じたのだと思います。28日の日曜日は、本当はMくんの町田のアトリエへ行く予定でしたが、予定を遅れてしまったし、封筒の展覧会が最終日でしたので、そちらを先に行くことにしました。

この展覧会は1回目ではないようです。定型大の封筒に自由に色をつけたり物を貼付けたりして、楽しく美しくいろどったもので、内外のプロの手によるものと公募したものが何百点も展示されていました。(規制がないようでしたので写真に撮りました。あとでまた入れ替えます。)



日本も自由になったものだと思います。私が若かった頃の郵便局ではこういう郵便物を嫌いましたよ。宛先を書くべき位置や面積が決まっていて、赤一色の封筒など色ものにもいい顔しませんでした。ハタチ頃にIに教わってフォロンが友達に出した手紙を画集にしたものを見たとき、フランスってこんなことが可能なの?!と驚いたものです。とはいえ、アート尊重もほどほどにしないと、現実には配達員さん泣かせでしょうけど。

ここでは毎年年賀状の公募展をやっていますが、封筒がこうなんですから年賀状は推して知るべしでしょう。やっぱり一度は世の達人達の作品を見ておくべきかもしれません。また、たいへん広いスペースを持つ施設でした。2階はNHKの常設展示があり、地味ですがまた来てじっくり見たいような展示もありました。1階では切手になった明治の錦絵の原画が並び、もっと時間がほしくなります。元はお役所だった名残なのか、学校やグループの見学者向けにお弁当を広げられるような無料の場所もありました。いまどき感心です。

その休憩所の手前には面白い売店があって、ふつうの土産物の他に切手収集に必要なもの、マニアが好むものが揃っています。「入荷しました!」との貼紙のボール箱は古い葉書や封筒の山。どこの家にもあるような昔の郵便物(ただしお爺さん、ひい爺さんの代のもの)です。何にするんでしょうね? 買い逃したり再び欲しくなった記念切手を買うのは東京中央郵便局だと思っていましたが、ここでも、かなり古い時代のものまで額面の値段で売っていました。私は30円均一の箱の中から「東京オリンピック記念」と「長谷川等伯」を買いました。それと、切手の絵葉書の箱に「ゴジラ」があったので買いました。前日行った中学の同期会で聞いた「ゴジラのグループ」の話(まったく内輪の話です)に因むものです。また、こんな本がちょっと欲しくなりました。全国1万数千の郵便局それぞれが持つスタンプの印影を全部集めたものです。(10月28日)



逓信総合博物館のホームページ

丸の内、丸ビル、その他


大手町の帰り、方向も定まらぬまま歩いていると東京駅に出ました。ということは、ここに丸の内ビルヂングがあったのね、と見上げると、信じられないような、実になさけない気持ちになりました。なにこれ? 

前にここを通ったのは十余年前で、取り壊した直後なのか地下を作っていたのか、囲いの向こうにクレーンの腕だけが見えました。そのときもがっかりしたものです。80年代半ばに私が働いていたのはかなり無機質な隣の新丸ビルでしたが、丸ビルは本当に素敵だったのですよ。耐震偽装などありえない時代の石造りで、とくに1階の商店街など大きな十字の通路に沿って1区画ごとに木のドアとガラスのウインドウがあって、限られた空間をお店ごとにアレンジして、落ち着き、貫禄、風格といったものがありました。果物屋さんとパーラーは千疋屋、文房具屋さんははいばら、和菓子屋さんは清月堂‥‥‥‥名店ぞろいで、今は青山にある老舗の毛糸屋さんの三ッ葉屋も2階にありました。他にも花屋さん、陶磁器屋さん‥‥‥‥ありとあらゆるもの。外からも入れる明治屋やポールスター。ヨーロッパの昔の商店のようで本当に本当に素敵でした。トイレのドアのノブだって真鍮とガラスですよ。上の階のオフィスも木のドアで、その上にガラス窓があって、そこに部屋番号が書いてありました。50年代のアメリカ映画の探偵事務所みたいでね。木製のファイルケースや黒のダイヤル式電話機が一番似合う場所でした。

とはいえ、じっさいに毎日お仕事している居住者にはオフィスの区画も手狭になったかもしれません。OA化が進み、インテリジェントビルの時代になり、霞ヶ関ビルだって90年頃には大規模なリニューアルを行ないました。しかし合理性一本やりではなく、銀座の奥野ビルのように古い良いものの価値を知る人達に受け継がれていけばよかったのに。などと思いつつ案内板に目をやれば‥‥‥‥これってホテルじゃありませんか! ふざけてますよ、こんなの。商店街のテナントもたぶん全部がチェーン店や支店で、いったい何処にこのビルの個性があるんでしょうね? こんな所が「新名所」として大々的に宣伝されて、ここを目的に奥様方が大挙して押し寄せるのですか。‥‥‥‥嘆かわしいことです。と思いつつ、地下で安いコーヒーをすすりました。(10月28日)

ちょうど今、テレビで東京中央郵便局の建物を高層ビルにするか保存するかの話をやっています。東京駅の駅舎は保存がきまっているそうですが、中央郵便局は見かけも派手ではないし賛否両論です。私は昔のものが好きで近頃のビルにはウンザリなので、残したいというより今風にしないでほしいのですよ。こんなに愚かで下品でカネカネカネの今の「有力者」達の思うままに都市も国家も破壊してほしくない。東京駅を真ん中に、右に中央郵便局、左に丸ビルというかつての眺めを100年先にも見たかったと惜しむばかりです‥‥‥‥(10月31日)

2007年10月28日

クイーン・アリスのハロウィーン菓子



私の生活にクリスマスとかヴァレンタインとかハロウィーンとか関係ないんです。積極的無視です。また、リュード・セーヌさん(広尾のフランス雑貨屋さん)によれば、ハロウィーンを大掛かりにやるのはアメリカと日本くらいじゃないか、フランスではやらない、ハロウィーンの翌日にお墓参りみたいなことをする、そちらのほうが一般的、だそうです。

さて、ある日おかずでも買おうかと西武の地下に入るといきなり小さいガラスのケースが置いてあって、それは洋菓子店それぞれが出しているハロウィーンのお菓子のショウケースだったのですね。不覚にもその中を見てしまい、クイーン・アリスのプリンの器が一番カワイイ!と思ってしまい、「クイーン・アリス、クイーン・アリス‥‥‥‥」と地下をウロウロ探しまわってしまい、そして買ってしまったのです。4種類あるうちの、カボチャとドラキュラを一つずつ。ついでにシュークリームも一つ買いました。生クリームにこくがあって、おいしいお菓子でした。売っている間にいくつか買い足したい衝動にかられましたが、それだけはガマンしました。いやー、やっぱりカワイイ。(10月28日)

(早く食べたくて、写真が手抜きになりました。反省。)

2007年10月19日

「縫い」のTシャツ


青山のジェムアートで、やはり「縫いプロジェクト」のTシャツも買うことにしました。彼らの描いた絵(へたうま調)を身頃いっぱいにプリントしたものですが、自由奔放なアップリケなど、一つ一つにプラスアルファの面白さがある長袖のシャツです。前に見たとき、断ちっぱなしの緑色の布(たぶん洋裁の裏地)の「アップリケ」のついた白いシャツがいいと思ったのですが、果たして残っていましたから。食べこぼしなど粗相をしないよう気をつけて着たいと思います。

また、「しょうぶ園」での制作風景を紹介するDVDも購入しました。彼らの仕事はほんとにすごいから、その様子に興味があるのと同時に、誰かわかってくれる人に教えてあげるときには有効な媒体だと思うからです。(10月17日)

2007年10月18日

紅谷のミニどら


紀伊国屋のデリに行く手前で和菓子屋さんを覗きました。青山通り沿いの「紅谷」です。初めて入る小さなお店ですが、いかにも年代物の大きな看板を掲げていますから、ムラムラ期待がわきます。ケースを見回して、まず目を引いたのが「ミニどら」でした。ミニサイズのどら焼きというわけで、小さい形と焼き印がとってもかわいいのです。

帰宅したのは夜ですが、まず一番にお茶を入れておやつにしました。「ミニ」と言うものの、小さいのは皮の大きさで、中のあんこの量は普通サイズのどら焼きと同じくらいあります。(皮・あんこ・皮の比率がシベリヤケーキのよう。)小豆の粒がテラテラ光り、いい甘さです。秋になると和菓子が恋しくなりますが、やっぱり和菓子は和菓子屋さんですねえ‥‥‥‥。(10月17日)

紀伊国屋のミートパイ


表参道の交差点あたりへ行く用があって時間に余裕があるときには、青山通り沿いにある紀伊国屋のデリに寄り道します。ここのミートパイが目当てです。そこで作ったパン、サンドイッチ、おかずなどを売っていて、コーヒーも売っていて、買ったものを食べる場所もあります。ちょうど焼きたてのミートパイが並んだときに居合わせたら、やけどに気をつけながら即食べちゃうのが最高です。もちろん出来たてじゃなくても、帰ってからチンして温めれば美味です。今日は他にカレーパンと食事用のパンを買いました。(10月17日)


(追記)カレーパンは何故かパリパリしていて、ええーっ?!というほど美味の反対でございました。紀伊国屋のパンでは初めてのことです。なぜだ???

2007年10月14日

麻岡さんのペイパーウエイト


「ギャラリー403」は、おそらく「奥野ビル403号室」からきた名前でしょう。前の日曜日にも開いていたそうですが、狭い廊下の奥にあり、不覚にも見過ごしました。

そこでは「麻岡宏之展」をやっていました。ご本人と奥様がつめていらして、なんともお洒落な熟年カップルです。とくに奥様の着物姿はとても洗練されていました。ギャラリーに置いてあった案内ハガキには「木彫帯留・木版画・和紙ワークス」とあります。確かにそのとおりなのですが、これらの単語からはけっして想像できない、小さな、ユーモアとウイットのある、大人の遊び心といった沢山の作品が展示されていました。帯留めが素晴らしかったのですが、今日は敢てこちらのお話です。

これはペイパーウエイトです。そのわりに重くありませんが、風の強い窓辺でなければ問題なさそうです。紙を丁寧にたたんで重ねて束ねたものを細い麻紐でしっかり束ねてあります。このように小さく折り畳んだ紙に千枚通しを通すのは、思うよりずっと難しいでしょう。どれも5センチほどの大きさで、全部違う紙、全部違う束ね方で、何か精緻なミニチュアの風情です。

紙は和紙のようですが、江戸唐紙といい、障子の紙とかなんとか‥‥‥‥。古い大福帳を使ったものもあります。その中から選んだのは千鳥のような、飛ぶ鳥の絵のあるものです。これだけはかなり下で束ねてり、上が広がった形をしています。また、束の外側はきれいに畳んであるのに中央がデコボコしているところは面白味があると思いました。


このビルのギャラリーで個展を開く人達は、とうぜんこのビルの雰囲気が好きなのだと思います。その時点で既に作家達と私との間に(価値観や美意識に)共通点があるのかもしれません。小さなギャラリーをいくつかのぞくたびに展示された作品にどこかしら惹かれてしまったのは、そのせいかもしれません。

2007年10月10日

銀座 奥野ビル


先週Yさんと出かけたとき、面白そうな個展の案内をもらったといい葉書を見せてくれました。そこで再び一緒に銀座へ繰り出したわけです。場所は銀座一丁目。葉書の地図をみながら歩いているとリアルにレトロなビルが現れました。いくつか看板も出ているので事業所が入っているのでしょうが、建物の案配では住宅のように見えます。思わず近づいてみると、目的のギャラリーはその4階ではありませんか。ウキウキして中へ入りました。



エントランスの内装はタイル! そして金庫! その夢のような光景に、私のカメラはいつの間にか slightly out of focus 。



エレベータは手動です。表の扉とジャバラの檻のようなものを手で開け閉めします。交絢社ビルなき今、この檻のあるエレベータは銀座で2つかもしれません。しかし機械は新しいもののようで、ボタンなど普通でしたし、動きも普通でした。(追記:11月2日のテレビ番組「タモリ倶楽部」がエレベータ特集でこのエレベータが紹介されてました。さすが。今ではメーカーが判らないという話です。)




階段室はこう。手すりは木です。



廊下と部屋のドアはこんな感じ。実際はもっと薄暗い感じです。



実はこのビルは有名だそうです。(そりゃそうでしょうね。)いくつものギャラリーが入っていますし、アート系デザイン系には好きな人が多いはずです。ここは建築事務所だと思います。2部屋を使っているため、2つのドアの分の廊下を自分の領域にして、手前に入口を作り、透明アクリルのドアを付けているわけです。

かつては有名人も住んでいたという高級マンションでした。今でも住んでいる人はいるそうですから、見物に行くには静かに邪魔しないように配慮しなけりゃいけませんね。いやはやなんとも素晴らしい。こういうビルがせめて10棟くらい残っていたらいいのに。(10月7日)

2007年10月6日

東レのトレシーで‥‥‥‥



私は長年の眼鏡人間です。東レのトレシーが発売になったとき、眼鏡を拭くのには一番いい!と思いました。2、3度買ったことがありますが、値段が高いのでもっぱら眼鏡屋さんがオマケに付けてくれるのを使っています。先日家族に言われて十数年ぶりに買ったところ、小さな箱からあらぬ説明書が出てきました。上の写真をよくご覧ください。

「東レトレシーを洗顔用にお使いになる場合は‥‥‥‥」

いつからでしょう? びっくりです。あんなにレンズがきれいになるから顔の垢もぬぐい去ってくれるだろう‥‥‥‥って、おそらく誰かが試したんでしょうね。冗談みたいな話ですが、真面目に説明してあるからには本当なのでしょう。毛穴の汚れや古い角質を取り除くのだそうです。トレシーに洗顔料をつけて、よく泡立てて、そっとなでるそうですが、洗うのに1分、ゆすぎに3分‥‥‥‥くれぐれもこすり過ぎないように等々。トレシーで洗わなくても、トレシー作る泡は他にないほどの細かいので、その泡で洗うだけも汚れの落ちが違うそうで‥‥‥‥。

無地が600円、柄物が800円という値段は眼鏡拭きとしては高価ですが、洗顔グッズと思うと妙なお得感があったりして‥‥‥‥(10月5日)

2007年10月5日

あやしげな秋のシャツ


高校同期のKちゃんが夫君の赴任にともない北京へ引越すことになりました。帰るのは何年後になるかわからないと言います。それなのに辞令が出てひと月足らずの出発とはずいぶん急な話です。ところが当人はいたってご機嫌。なにしろ前の赴任で中国にはまってしまい、その後北京へは13回も行ったそうで、中国語の勉強も続けてきたのです。彼女にとっては満を持しての移住なのかもしれません。

子供も手が離れ、まだまだ若くて元気なときに、自分の好きな国で暮らせるなんてとても幸運だと思います。まるで夫婦だけで定年を待たずに第二の人生を始めるかのようです。しかも大連と上海には既に何年も単身赴任を続けている同期のIくんとKくんがいて、熱烈歓迎コールの連発ですし、長春には恩師H先生もいます。たとえ1000キロ離れていても同じ国で旧い友達が待っている、というのはいい感じです。

というわけでKちゃんの壮行会が決まったとき、例のアイロンプリントのあやしげな「偽キャラTシャツ」を贈ろう!と思いました。しかし9月も半ばでお店の棚は長袖シャツに入れ替わった後です。一番絵になるのは白の半袖Tシャツなので少し困りました、が、どのみち季節は秋。ということで灰色のモックタートルの長袖シャツにし、それに合うようデザインに手を加えました。背景に色を入れ、落ち葉など舞う風情です。中国語の台詞も中国本土用に簡体字にしました。とどめに私のインチキブランド「KNIT-RIT」のタグを作って付け、試し刷りのプリントを包装紙代わりにくるみ、ギンガムチェックのリボンをかけました。

でも壮行会でKちゃんにはおそるおそる手渡したんです。だって基本的に同期生はみんな大人ですから。でもKちゃんはとても喜んでくれましたし、みんなも面白がってくれました。ああ、なんて嬉しいことでしょう。「偽キャラ」がのたまう中国語の台詞は中国では問題があるかも?‥‥‥‥と危惧する向きもありますが、これから北京は寒くなりますからね、セーターを重ね着しますよね。(9月28日)

2007年10月3日

読書の秋・ありやなしや

本を読まなくなって十年以上になります。90年代半ばまで猛烈に読みました。毎月3万から5万円くらい使い、アメリカやイギリスからも段ボール箱で取り寄せたものです。人も羨む仕事を辞めてからは考えるために読み読むために考え‥‥‥‥気が狂いそうな思索三昧をやって知りたいことがわかったら、もう何の本を見ても意味を感じなくなりました。実にわたくしは悟りの境地におりましたのです。それはそれとして、本を買うのは稀になり、買っても実用書が専らになりました。ちょうどその頃から老眼が始まり、文字を見ると疲れるし億劫です。老眼鏡を作りましたが、本は読みつけないと読むのがすごく遅くなります。中断すると戻るのに日にちがかかります。かつては毎日1冊読んだものだ、なんて夢のようです。

泣き言にも似た前置きが長くなりましたが、今日はなんとなく本屋さんに寄り道して、珍しく文庫本を買いました。本当はずっと佐藤優の「反省」が読みたいのですが、私の行く先々ではみつかりません。アマゾンならワンクリック、でもあそこも倉庫で健気に本をさばいているのは日払いの非正規雇用者だときくと、アマゾンで買うのは他で入手できない商品に限ろうと思うのです。だいたい本は本屋さんで手に取って買うのが一番です。ともかく店内をフラフラさまよいながら、今日はこんなのに興味を持ちました。


「江戸俳諧歳時記/上」加藤郁乎著(平凡社ライブラリー)

「上巻」しか売っていませんでしたが。春夏を扱っており、今頃の季節の分がありません。どのみち私には背伸びした本です。これは頭からちゃんと順番に読むのもよいでしょうが、傍らに置き折に触れてパラパラめくるという読み方が楽しそうです。そういえば昔面白い江戸川柳を教わって、しばらく岩波文庫を近くに置いていたことがありました。こちらは少々上品です。江戸の俳句を味わう水準にありませんから、柚の花のことを「ゆのはな」「はなゆず」「はなゆ」と呼ぶのを知り、紫陽花の名の由来など読むだけで満足です。


「完本 文語文」山本夏彦著(文春文庫)

この名前を見て思わず手にとりました。ずいぶん久しぶりです。昔読書家だった頃に信頼していた書き手の一人です。こういう物事のわかった大人がほぼ絶滅した今は文化の廃れた悲しい時代だと思います。この人は樋口一葉(5千円札)の文章を絶賛していましたっけ。私はここ数年急速に広まった広告屋とマスメディアの共謀のような出鱈目な日本語が大嫌いです。人格などかなぐり捨ててガラス窓を叩き割ってわめき散らしたいくらい大嫌いなのです。(このブログでも私は密かなる抵抗を試みており、こんな文章ではありますが、どんなに普通に使われていても嫌いな言葉や言い回しやかな遣いを断固拒否して書いています。)ありし日翁の嘆きはいかばかりであったか。今あらためて、思えばよき時代を生きた気骨ある親父が文語について語るのをきき、冷静を保ちたいと思います。初版は2000年5月のようです。

ジェムアート「縫いのシャツ展」


Yさんのお誘いで日曜日に原宿へ繰り出すことになり、原宿へ行くなら青山まで足をのばして、ジェムアートで開催中の展覧会を見に行けると思いました。先月買った「婦人之友」誌で紹介されていた「縫いのシャツ展」です。鹿児島市の「しょうぶ学園」が長年おこなっているプロジェクト(「縫いプロジェクト」)の作品を展示するもので、Yさんも興味を持ってくれたし、お買物やおやつの後に一緒に行きました。

雑誌に載った写真に、20年くらい前に見てそれはそれは衝撃を受けた「イギリスのニードルワーク展」を思い出し、とても期待したのです。ジェムアートの場所は根津美術館(工事中/閉館中)の向かい、ちょっと前のビルディング1階の洒落た一区画でした。

一歩踏み入れるなり驚きました。小さなギャラリーいっぱいの作品。中央に櫓(やぐら)のような枠を組み、ハンガーにかかったシャツが何十枚もぶらさがっています。もちろん壁にも棚にも椅子の上にもボディにも。

右の写真は上の案内状を拡大したもので印刷のツブツブが出て見づらいのですが、ある「シャツ」の右袖部分です。サラリーマンが着る普通のYシャツに思うままの針を刺し、1年を費やして刺して刺して縮んで歪んでガチガチ・ゴワゴワ、素晴らしいことになりました。多くの「縫い」の作品の中で、このシャツは一つの極限、終着点、そうした位置にあると思います。会場でも、最初に目に飛び込んだのがこれでした。

しかし全てのシャツが作者それぞれが好きなやり方で作った個性的な作品でした。殆どは大人が着用できる形をしており、伊達男が着たら素敵だろうなあと思う洒落たシャツがいくつもあり、いくつかは販売していました。(私には着れないし買えませんが、客観的に値段は安すぎると思いました。2倍くらいが妥当だと思います。)中には下書きの残った作りかけみたいなものもあります。誰もが才能あるわけではありませんし、始めて間もない人もいるでしょう。しかしどれも確実にいい「味」があり、上手くなりすぎた作品よりも私などは好感を持ちます。素材はどれも既製品や古着など質素なもので、糸も木綿、絹、毛糸‥‥‥‥なんでもアリです。しかし着物全部を刺した物凄くゴージャスなローブはアヴァンギャルドで、ハリウッドのパーディーで女優がイブニングドレスの上に着てもいいくらいですし、あるものは真っ赤なシャツに真っ赤な糸をフサフサに刺し、まるでアフリカの儀礼用の力強いファブリックのようです。はたまた「女子トイレ」「ラジオ(周波数と思われる数字が続く)」その他の文字列をシャツ全面にステッチしたものは真にシュール。いずれも色彩豊かで生命力があり、つくるよろこびの発光体みたいで、見ていると自分の中にズンズンズン♪‥‥‥‥リズムがわいてくるようでした。

(ここの部分はまだ上手く解説できないので今日は軽く飛ばします。後でちゃんと書き直す予定です。)

オリジナルの長袖Tシャツもたくさん販売していました。イラストや手書き文字をプリントして、所々に生地のアップリケ(のようなもの)があり、とても味があります。(真似したくなります。)Yさんはあるシャツがかなり気に入ったのですが、「アップリケ」した巾広のゴム(パジャマのズボンの)がどうもマズイと思ったそうです。私も一つ欲しくなりましたが我慢しました。実はその日は既に予算を超えるお買い物をしてしまったからです。後悔しました。

作品の数の多い展覧会では最初に目に飛び込むものと何度も見て回るうちにジワジワ見えてくるものとあります。額に入った作品に気がついたのはだいぶ後になってからでした。その額の中でも途中から見えてきた一つの作品に惹かれました。黒くて目の粗い網のようなものに白い糸を刺したもので、立体的な丸いモチーフがかもしだすやわらかな感じと妙に洗練された感じが不思議なバランスで混じり合って見えます。それを見ていると他の作品がすーっと後ずさって思えました。購入を決めてジェムアートさんに告げると作者名を教えてくれましたが、なんとそれは写真のシャツの作者と同じ「野間口さん」でした。テクニックも色彩もまったく異なるのに、やはり共通するものがあったんでしょうか。

この日は予約だけして、第二部が始まる9日以降に再び見に行ったときに受け取ることにしました。会期後半の第二部ではこうした針仕事のバッグが展示されるそうで、とても楽しみです。

ジェムアート 針仕事の素晴らしさは実際に見なければ想像もできませんが。
「縫い」のシャツ展 前半・9月15日〜10月7日/後半・10月9日〜28日(月休)

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