お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2008年8月26日

amazon.com の音楽配信

(クリックして大きくできます)

久しぶりにモノ探しでアメリカのamazonを見に行くと、音楽売場ではMP3のダウンロードを始めていました。これがなかなか凄いのです。結論を先にいえば、アメリカ国内からしか購入できなかったのですが。ITMSなら裏技がありますが、amazonの場合、住所も名前も登録済みですからごまかし用がありません。(日本のamazonでは未だないサービスなだけに残念です。)でもITMS(iTunes Music Store)よりすぐれていると思った点を書いておきましょう。

◎ビットレートが256kbps
ビットレートは音の質をきめる数値の一つです。MP3は音声データをすごく圧縮したものですが、それなりに種類があります。数値の大きいほど音質が上がります。ITMSでは標準が128で、一部のプラス(+)が付いているものだけが256です。

GarageBandのトラックが2822、CDをそのまま読み込ませた非圧縮が1411、ストリーム(ラジオのトーク番組)のポドキャスト配信は40。音楽配信の128と256の違いがどれほどかはよくわかりませんが、256のほうがいいのは確かです。

◎アルバムを通しで試聴できる
曲名の一覧表の上に「Preview All」というボタンがあって、これをクリックすると1曲目から通しで試聴できます。別のページを見ながらでも試聴できるのは便利です。ITMSでは1曲ずつクリックしなければならないし、サインインしていないと何度もメッセージボックスが出てきて煩わしいところですが。もちろん1曲ずつ選んで試聴することもできます。サンプルの時間はITMSより短い気がします。

2枚組、3枚組、ボックスセットさえ通しで試聴できます。ダウランドの12枚組は282曲入り。サンプルとはいえ2時間以上ですよ。別の作業をしながらバックグラウンド音楽がわりです。気になるフレーズが耳に入れば、即タイトルの確認もできます。(おすすめサンプル/エマ・カークビーの美しい声が聞けます。)

◎安い
値段は曲の長さで45セント、99セント。ITMSでは売れ筋を「アルバム・オンリー」として単品で売らないような印象がありますが、amazonでは7分〜8分くらいから「アルバム・オンリー」になるようです。(とくにクラシックの場合、1曲が1分少々〜30分以上など、いろいろですから。)アルバム全体の値段はITMSより1ドル安いものもあります。

◎MP3以外と比較できる
MP3、CD、さらにCDの中古、と3つを同時に見比べながら選べます。amazonならではの強みが最大限生かされています。何しろ本から衣類から家電から何でも売っていますから、他の物ともいっしょにお買い物できます。(そのために1日がそれで終わってしまうこともあります。)

◎検索しやすい
検索機能はITMSとは比べものになりません。ITMSの集計表のような限られたページではなく、本を検索するのと同じにできます。とくに、曲名、演奏家以外の、「バロック・オーボエ」などというキーワードで検索すると、単品のリストと、アルバム(写真付き)のリストが出てくるところがとても見やすいと思いました。

◎情報量が多く、見やすい
ふつうのwebのデザインの中にあるため、大きさと色に変化のある文字情報と画像がいっしょで見やすいのです。本を探すときと同じに、複数のウインドウで、気になるものを全部並べておくことができます。MP3になる前のオリジナルの発売年月、レーベル名をはじめ、書籍と同様の基本情報を得られます。(ITMSではまったく配慮のない部分です。)同じページに購入者の批評、関連商品の紹介、BBS,、等々情報量は圧倒的です。

画面作りと機能の両面から、amazonはネット時代の最初に通販サイトというものの形を作ってしまったのですが、あらためて面目躍如というか、さすがだと思いました。

▲購入ボタン後はITMSの勝ち、かも
ITMSはiTunesと一心同体なるがゆえ、ITMSで購入ボタンをクリックすると購入の確認画面が出るだけで、その後ただちにダウンロードが始まり、終わったときにはiTunesのリストにちゃんとおさまっています。amazonでは(最初だけでしょうが)ダウンロード用のソフトのダウンロードが始まります。小さな表のようなもので、そこに購入した曲が表示されるのでしょう。私は購入できなかったのでそこまでしかわかりませんが、おそらくダウンロードしたものの置き場所を自分で設定するのだと思います。iTunes以外のソフトにも対応しているという意味では、Mac以外のユーザーには関係ないかもしれませんが。


さて、amazonでは本と同じに、一つ品物をを見ると関連の音楽がズラズラズラ〜と出てきます。「これを買った人はこういうのも買います」という前例や傾向も示されます。そういう仕組みからこのような魅力的なアルバムを見つけました。スペインのレーベルから出ているようです。


Orient - Occident (by Jordi Savall)

● ここで試聴できます。画面をずっと下がってください。

米amazon‥‥‥‥24.98ドル。(輸入盤のせいか高いほう/送料は3ドルほど)
米amazonの中古‥‥‥‥16.23ドル〜(送料は7ドルほど)
日本のamazon‥‥‥‥3396円(輸入盤/送料無料)
日本のiTunes‥‥‥‥1500円(256kbps)
ところが米amazonのMP3なら8ドル99セントなんですよ。送料いりませんし。(解説書もありませんが。)
こういうのは迷いますね、ほんと。

《 結 論 》
MP3はアメリカのamazonで検索して日本のITMSで購入、しょうかネ。

● ベースオントップ ← 外国のITMSで購入する手段はこちら

2008年8月25日

ITMS でヴィヴァルディ



Il Pastor Fido
Antonio Vivaldi
Pal Keleman, Zsuzsa Petris

今朝ITMSで音楽を買いました。ビバルディ(ヴィヴァルディともいう)の「忠実な羊飼い(Il Pastor Fido)」をききたくなったからです。恵比寿の部屋には昔買ったクラウディオ・シモーネ(指揮)のレコードがあるはずなのですが、探すのが面倒なのと、その演奏がとくに好きだったわけではなかったという理由です。(というのは、さらに遡ること、毎朝きいていたNHKのFMの「バロック音楽の楽しみ」のテーマ曲だった「忠実な羊飼い」が私の基準になっているからです。)

ITMSでは3つを聞き比べました。リコーダーの音が一つは甲高く、一つはまあまあ。しかし記憶に残る馴染みの色に似ていたものがあったのでこれにしました。Pal Keleman という人です。(どこの国の人でしょうね?)聞きたかったのはバッハもパクった有名なアダージョだけで、1曲150円です。しかしアルバム全部なら28曲で900円、お得!と飛びつきました。演奏時間1時間のアルバムでダウンロードは1分か2分。驚きです。(いかにデータ量が小さいか‥‥‥‥。128kbpsです。)30秒の試聴の部分ではわかりませんでしたが、演奏方法は私の「なじみ」とはずいぶん違う所もありました。あらためて、あれ(「バロック音楽の楽しみ」)は誰の演奏だったのかと思います。でも全体では伴奏を含めて耳にしっくりくるものでした。

さて、夜になって他の探し物のついでにamazonを調べると、なんとこのアルバム、1500円で新品のCDがありました。中古では780円から。CDのほうが音がよいのですから少し反省しました。CDをMacに読み込ませるのは(さらに容量節約のため圧縮するのは)手間ですが、CDなら他の機器でも聞けるし、コピー権の面倒も考えずにすみます。でもデジタルデータは(1)場所を取らない、(2)どのみちMacにイヤホンを差して聞くことが多い、(3)実際の支出の額が(いちおう)小さい,等々理屈をつけました。

ITMSでは一昨年たくさん買いました。(アルバム1枚とバラを2、30曲ですが。)しかしMacを壊してバックアップしなかった一部はパーです。バックアップは大事ですね。空CDも安くなりましたから、700MBいっぱいにならなくても、ジャンルがチャンポンでも、さっさとバックアップを取らなきゃいけませんね。今は外付けハードディスクにもコピーしています。

それにしてもこのアルバム、通して聞いても最後まで心地よく、耳にやさしく、廉価盤なのにいい感じです。

2008年8月19日

STUDY ROOM で注射ピュ〜





上野駅の公園口を入って奥深く‥‥‥‥こんな商店街があったとは、と驚いたのは今年の春。しかし帰りが遅くなりがちで、お店が全部開いている時間に行ったのは今度が初めてです。夕方の6時頃で、まずは駅弁屋さんに行くとすでに空っぽ同然。トホホでお店を出ると、向こうに見えるのは‥‥‥‥ガイコツ?

ともかく等身大のガイコツがお出迎え。ウインドーを見ると科学博物館の売店で見たお土産が並んでいます。え? ここは科学博物館の姉妹店なの? それなら博物館まで行かなくても事足りちゃうかも? 中に入ると科学博物館ぽいものがいっぱい。また竹橋の科学技術館の売店にあった本物の宇宙食も売っています。(後できくと、科学博物館とは別だが、あそこに卸している会社のお店のようです。)

お店はお客でいっぱい。夏休み中のせいか子供もいっぱい。あれこれいじりまくりです。壊れやすい物など、お店の人が注意することもあるのですが、それが感じがよくて、はあ上手いなあと思いました。とにかくいろんなものがあり、いちいち見ていたら何時になるかわかりません。面白いのを見つけたところで切り上げないと。


はい。うまくできた注射器の‥‥‥‥筆記具です。よく使うのはボールペンですが、シャープペンのほうが格好がいいので2つ。(芯をこの倍くらい出すといい感じです。)どちらも薬は4色あり、ボールペンのインクは黒一色です。(147円)

次は温度計。大きな数字に色がついて見やすくて、色によって上昇傾向か下降傾向かもわかります。ただし紙に「コレステリック液晶」を貼ったもので、定規としてはヘロヘロです。線を引くより長さを測るのに向いていますね。温度は目安とのことですが(それはどれも同じ)テーブル脇に置いていると便利です。定規は25センチ、温度計は16〜35度で、470円くらいでした。

もう一つとても欲しかったのは、七宝焼のようにきれいな仕上げの小さい小さいカエルのペンダントです。4200円ですが、今はDTMの支出がかさんでいるので我慢しました。

営業時間は朝10時〜夜10時。それなら遅くに来たときも開いていたはずなのに、どうして見逃したのか、不覚です。なお、科学博物館の売店の姉妹店ではないが、あそこに卸している会社のお店だそうです。都内下北沢とここ、他では仙台、中部国際空港、静岡、福岡天神にお店があります。(8月17日)

● 教育雑貨店 ザ・スタディールーム 通信販売もやっていますが、商品紹介のページにある数点だけでしょうか? だとしたらちょっと残念です。

2008年8月16日

アナログ・シンセサイザー作りました。


毎日の暑さにうなされながら「microKorg が欲しいなあ」と思っていました。しかし実際に使いこなせるのかといえば疑問です。すぐに投げ出すような無駄遣いかもしれません。つまり、私のアナログ・シンセサイザー1号機として相応しいかどうか迷います。

そんな折り、たまたまジュンク堂を見ていると、たまたま音楽の手作りコーナーのテーブルがあり、バイオリンやウクレレのキットに並んでこれを見つけたてコレダと思いました。GBUCで見たやつです。即決です。3360円ですからね! 「別冊・大人の科学マガジン/シンセサイザー・クロニクル(ふろく・アナログシンセサイザーSX-150)」です。(買うのは初めてですが、いつもとても面白い付録の雑誌です。)

本のほうが付録に思えてしまいますが、あくまで本が本体でシンセサイザーは付録です。読めば充実、ビジュアルも内容も豪華です。シンセサイザーの歴史、現在のプレイヤー達、富田勳やYMOなど巨人達のインタビュー、作る側のコルグ、ローランド、ヤマハへのインタビュー等々。そして付録のシンセの作り方、実に洒落た「改造」版の紹介、遊び方、シンセの音についてのお勉強‥‥‥‥ 今の私にぴったりでした。(思い出にひたる人にもいいでしょう!)

「音」には(ちょうど「色」の三要素のように)三つの構成要素があり、その組合わせで音が変化するのですって。音程=周波数=VOC、音量=振幅=VCF、音色=波形=VCA。ナルホド。シンセの仕組みもMIDIによく出てくる用語の説明が有用でした。エンベロープ、カットオフ、アタック、ディケイなど、こういう単語はGarageBandで音を改造するときに出てきますが、いつも適当にいじっていました。基礎知識を得れば欲しい音を合理的に作れるようになるでしょう。ここにあるのは限られた機能ですが、実際にいじりながら理解していくのは最高のお勉強です。超初心者にとっていい入口であり、次へ進むためのいい足がかりです。



必要なものは全部入っています。用意するのはプラスのねじ回し(ドライバーともいう)とセロテープ(一ヶ所だけ線を固定するための)。アナログ・シンセを作るといってもハンダをあてたりコイルを巻いたり電気っぽいことは何もないのでした。基盤はすっかり出来ており、作業はネジを止めるだけです。すぐできました。(あっけない‥‥‥‥)


このアナログ・シンセ「SX-150」は赤い棒の先で炭を塗った所(下の茶色い横長の中の黒い横長の部分)に触れると音がします。聴力検査のような種類のポーという音です。ツマミを回しながらこの音の波の幅や振りを変えると、ポ〜〜〜になったりポポポになったりポワーンになったりします。また若干音の色合いを変えるとネコになったりピアノになったりします。炭素の帯は左が低音、右が高音で、自分で見当をつければ音階を鳴らせますよ。(8センチの幅で4オクターブ出ます!)本体に入出力の端子があり、他から音をもってきてここで変化させたり、ここの音をヘッドホンで聴いたり、他の機器へ送ったりできます。知識や機材が増えれば次の遊び方ができそうです。

そういうわけで、次は Korg DS-10 だな、と密かに思うのでした。(8月14日)

2008年8月15日

MACで録音


マイクつながりです。アップルストアにBlueというメーカーのマイクが載っていました。(わりと最近だと思われます。)三本足のついた白い球体で、名前は「Snowball」。なんともいい形をしています。サスペンション・マウントというある種の保護らしいのですがRingerという商品名の飾りのようなものを付けるとさらに魅力的。販売者のサイトには色違いもあり、ほかにも古いのか新しいのかわからないような、面白くて美しい形のマイクがいくつも載っていました。

● ブルー・マイクロフォンズ (上に並んだ色をクリックするとそれぞれのマイクが現れます。)

しかし値段を見るとSnowball以外の機種はたいへん高価。Snowballだけがお買い得に見えます。

素人がポドキャストを楽しむ時代。あたりを見れば5千円以下でもちゃんといい格好をしたマイクがあるのですね。すると1万9800円は素人に贅沢でしょうか。(ちょうどヘッドフォンを選ぶときの迷いに似ています。)しかし解説によればこのマイクは、


キッチン・テーブルでギターをレコーディングする場合も、またスタジオでバンド全体を録る際にも、これまでUSBマイクでは実現不可能だった、細部に渡るサウンドをキャプチャー可能です。

とあります。「キッチン・テーブル」が泣かせます。マイクと一対一でも、取り囲む形でも、静かな朗読もバンドの大音響もアリなんですね。しかもMac本体でBlueのマイクであることを設定すればUSBポートにつなぐだけで音声をGarageBandのトラックに録音できる‥‥‥‥というのは、すご〜く簡単ということ‥‥‥‥しかもこの外観ですよ。

このマイクを使いたいがために、発生練習や朗読を始めたりして。寒くなった頃には、炬燵に入ったまま棚に手を伸ばしてこのマイクを取り、炬燵板の上にMacとマイクを並べてポドキャストのレコーディング、なんて‥‥‥‥それくらい話すことがあったらいいのに。

● アップル・ストア 買うなら送料無料のアップルストアがお得のもよう。

(写真はアップルストアとブルー・マイクロフォンズのサイトから拝借いたしました。)

2008年8月13日

iPod で録音


今日お店を歩いていて面白いものを見かけました。Degitec社製「ボイスレコーダー」あるいは「iPod ドックコネクタ搭載 iPod 対応録音アダプタ」、型番 LIC-iREC01 です。パッケージには「iPod用マイク」と書いてあり、写真のとおり、iPodの長さが少し長くなるだけの大きさのステレオ録音マイクです。へえ、こんなことができるんですか。

iPodの下部のドックコネクタの所に突っ込むとそれ用の画面表示に変わり、iPod上で操作するそうです。マイクを向けて、普通に録音です。電源はiPodですが、この録音アダプタとMac(パソコン)をUSBで繋げば充電しながらの録音再生できる‥‥‥‥ アナログ機器各種、たとえば手持ちのレコードプレイヤーをミニジャックに繋げばアナログ・レコードがWAVデータとしてiPodに録音できる‥‥‥‥ iPodに入れたWAVデータはiTunesへ転送できる‥‥‥‥ ほんとかいな。

アナログ・レコードの録音では音質が気になります。元のレコードプレイヤーの性能が第一かもしれませんが、WAV、ということはiTunesにダウンロードしたMP3の音楽よりも音がいいこともありえます。(アナログ・レコードで持っている昔の曲をiPodで聞くためにITMSで買いなおすなんてこと、ありがちですからね。)ちなみに録音周波数帯域は20Hz〜16kHzとのことです。(FMラジオの上限は15kHZとか。)WAVのサイズがAIFFと同じなら1分あたりの目安は1MB。8GBのnanoなら半分使ってもかなりの量が入りそうです。iPodドック付きのレコードプレイヤーなどを買うより、小さいし安いし、普通のボイスレコーダーにも使えるし、お試し気分でそそられます。

量販店での販売価格は7980円でした。即買いそうになりましたが、今日の目的ではないと深呼吸。なにしろ今はあれこれ欲しいものがいっぱいです。(でも明日かあさって買っちゃうかも。あーでもMicro Korgが‥‥‥‥)


● カタログはこちら PDF書類をダウンロードしてください。(上の写真はここから拝借いたしました。)

● アナログ音源のデジタル化については、たとえば「アナログ音源からCD作成スレ」など手がかりになるかもです。


(追記:8月14日))
ヘッドフォンを求めて町の量販店に行ったついでに見ると6980円でした。これは買っておいて無駄ではないと思います。マイクは他にも4種類あり、録音、再生、iTunesへの転送ができるものと、さらに他の機器からの録音(ライン入力)ができるものの2種類があり、6980円と7980円でした。たとえばiTalk Proはライン入力ができませんが、こんな感じです。↓ 黒しかないのが残念ですが。

● iTalk Proの フォーカル・ポイントのサイト。

2008年8月12日

暑かった!

昨日から少ししのぎやすくなったと思います。先週の暑さといったら‥‥‥‥私はのびてしまいました。
この1週間に書こうとしたことはこれからまとめて、少しずつ、日付を遡ってアップしようと思います。
オリンピックの開会式のこと、
飯富崇生さんのギャラリーのこと、
古本のこと、などです。

2008年8月4日

戦前の日本の交響楽@旧奏楽堂


上野の続きです。5時半をまわってアートプラザを出ると、そろそろおなかも減ってきて、たまには早く帰ろうと思いました。しかし旧奏楽堂まで来ると明かりがともっていて‥‥‥‥門の前には数人の人‥‥‥‥? もしかして? 近くへ行って予定表を見ると、なんと今晩コンサートがあるというのです。

芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ
音楽監督、指揮・本名徹次
「埋もれていた作品たち 日本の交響作品撰集」



とても興味深いプログラムじゃありませんか。私など絶対に知らない作品でしょう。こないだはわざわざ出て来て空振りでしたからね、これを逃す手はありません。6時から当日売りがあるというので列に並ぶことにしました。手元に残った4500円から3000円で切符を買うと、今度は席取りで並びました。(全席自由席のため。)開場時間の6時半に近づくと100人くらいの列になっていました。

昔の木造校舎をうんと立派にしたような、木造の戸口です。人の流れについて細い廊下を入って左に曲がると赤絨毯の階段を上ります。コンサートホールは2階なのですね。上ったところはホールで、今風の長椅子が置いてありましたが、奥に2脚、古い立派な椅子が並んでおり、しかも隣はスチーム。いい感じでした。



コンサートホールは外からは想像がつかないものです。舞台は小学校の講堂といったところでしょうか。さすがに奥行きが狭いと思いますが、正面にパイプオルガンのパイプが見えました。座席はほどよい階段状で、300席あるそうです。今ふうの簡易な(しかし座り心地のいい)椅子が設置されており、床はリノニウムです。しかし壁、窓、カーテン、天井、シャンデリア‥‥‥‥それらは昔のままで、文明開化の時代のウルトラ・ハイカラな世界を彷彿させます。

列に並んだ甲斐あっていい席を確保しました。腰を下ろしてひと息いてハタと気づきました。「しまった。」実は今日あまり寝ていませんでした。欠伸が、欠伸が‥‥‥‥。


オーケストラ・ニッポニカという原生種のような名前のオーケストラは50名くらいの管弦楽団でした。色はだいたい似ているけれど各人バラバラの衣装というあたり、親しみを感じます。

◆「山形民謡によるバラード」(1941)/作曲・高田三郎(1013〜2001)
◆「ピアノ協奏曲第3番」(1936)/作曲・大澤濤人(1907〜1953)
◆「笛吹き女(作詞・深尾須磨子」(1928)/作曲・橋本國彦(1904〜1049)/作詞・深尾須磨子
◆「組曲 大陸の歌」(1941/43)/作曲・深井史郎(1907〜1058)

「山形民謡」で「バラード」で、構成は「ファンタジー」と「フーガ」ですよ。すごいイマジネーションです。今の日本人が自由だの国際的だの言っても、こういう自由を捨てただけじゃないのと言いたくなります。とはいえ「フーガ」の冒頭でバッハの「大フーガ」を連想したのは私が寝ぼけていたからでしょうか。「ピアノ協奏曲」は第1楽章と第3楽章がピアニスト(野平一郎さん)がカッコよく見えるような激しい曲調でしたが、第2楽章のゆるやかなメロディーが素敵で、もう一度聞きたいと思いました。「大陸の歌」は堂々たる正統派管弦楽だと思いました。この人は音楽で大東亜共栄圏の瓦解を予見したといわれたそうですが‥‥‥‥。

しかし度肝を抜かれたのは「笛吹き女」です。ソプラノの増田のり子さんは水色のドレスからして綺麗でした。音楽の導入部は「牧神の午後」を思わせますが‥‥‥‥圧倒されました。どういえばいいのか判りません。15分ほどの曲ながら、すばらしいソプラノがオーケストラと互角で織りなす「笛吹き女」の詩。それは古風な候文で、その曲は自己模倣ジャポニズムとは無縁。こんなのは初めてです。解説によれば橋本は歌曲にも力を入れた作曲家で、この曲では「日本としては新しき試みなる朗読調式の作曲法による」とのことです。なんとかもう一度聞けないものでしょうか。

所々でウトウトしたのが残念でしょうがありません。いずれもめったに聞けない曲で、レコードやCDがあろうはずもなく。せめて「ぜひまた演奏してください」とアンケートでお願いしました。オーケストラ・ニッポニカはこうした日本の交響楽を積極的に演奏し、内外の「埋もれた音楽」に光を当てること(さらにアジアとの交流)を活動の柱としているそうです。いや〜、お見事でした。


さて、旧奏楽堂は台東区が管理しており、毎月たくさんの演奏会が行なわれているのでした。芸大つながりをはじめ、この建物の歴史と機能と雰囲気をじゅうぶんにいかしたものばかりだと思います。
◆「芸大生による木曜コンサート」
8月21日(木)はヨーロッパの宗教音楽で、声楽。

◆「日曜コンサート」も芸大生によるもので、2時〜と3時〜の2回。第1、第3日曜日はチェンバロ、第2、第4日曜日はパイプオルガン、第5日曜日は「特別コンサート」。

こうした毎週恒例の演奏会は建物の入館料のみで聞くことができます。
単独の演奏会で私が興味を持つのは
>◆8月31日(日)午後2時〜/3時〜(日曜コンサートの第5日曜版)
「ヘンリー・パーセルのオード」と題するバロック音楽の演奏会。合唱と、古楽器を使う管弦楽のグループの演奏(入館料として300円)

◆9月24日(水)午後6時45分〜
「奏楽堂 バロック・シリーズ 第50回/アンサンブル・コルディエ定期演奏会 第14回」。チェンバロ、バイオリン、ビオラ、チェロのアンサンブルで、演目はバッハの「フーガの技法」です。(3500円)

◆9月20日(土)午後2時〜
「奏楽堂特別展 日本の作曲会シリーズ11/中田喜直展 レクチャー・コンサート
中田喜直の歌は日本人なら誰だって大好きです。合唱、中田喜直夫人のお話、ピアノ独奏という何とも楽しそうなプログラム。(1500円)

この建物が時の勢いで壊されなくてよかったと思います。こうした、何か「人間サイズ」の空間で、いい音楽を身近に楽しむ機会があること、それこそが「文化」だと思います。今晩のように素晴らしい「埋もれた作品」を聞かせてもらえるのも、こうした小さなホールならでは。カネにあかしたギンギン立派なホールに著名な外人ばかり呼ぶのもいいけれど、高い料金で同じ演目ばかりじゃね、そういうのはね、食傷です。私はまず自分の好きな音楽を聞きたいし、それをやってくれるのが日本の演奏家なら、お金を払って聞きにいくことは一つの音楽への参加であり、聞き手としてとても大事なことだと思うのです。(でもエマ・カークビーは好きです。エヘヘ。)

これからも折にふれて予定表を見て、いい演奏会があれば聞きにいきたいと思います。(8月3日)

● 旧東京音楽学校奏楽堂 建物の見学やコンサートの案内など

2008年8月3日

今日の博物館みやげ


「シルクロード」の一筆線と細筆4本セット。今朝、ご近所にアンケートの回答を届けるのにメモを添えたのですが、そのとき手元にキラキラ光るマンガチックなのしか残ってなくて、いい一筆線を買っておかなきゃと思ったところです。筆はウサギ、イタチ、あとタヌキだったかな? 3種類の毛の筆です。軸が短く、小さい文字に使いやすそうです。(一筆線は350円くらい、筆はセットで千円くらいでした。上野の国立博物館、表慶館の売店にて。)

三沢厚彦 と Damien Hirst


上野の続きです。博物館を出て休憩がてら芸大アートプラザに行きました。(すっかり味をしめました。)そこで100円のアイスコーヒーでしばし涼むと、おもむろに店内に入って「石膏デッサン入門」のガチャポンのガチャポンを2つ買いました。(一つは「石膏タイプ」の「マルス」でした。やった!)

次に iichiko のピンバッヂの「マーガレット」を買うつもりでしたが、白い木綿のキャップに付けるには白い花は映えないからやめました。そして前回見なかったお店の奥のほうへ行ってみました。段を上った細長い所で、書籍とCDの売場でした。

CDは芸大の先生たちが演奏するクラシックです。音楽関係の本に混じって面白かったのは「白のバイオリン」。先っちょの渦巻きやツマミも再現しています。他に「チェロ」と「グランドピアノ」がありましたがいずれも「上級者向き」と明記されていますから、私には無理だと諦めました。(細かい作業は大好きでしたが、近年とみに手先が不器用になりまして。)黒い背景のアクリルケースに入った見本は(実は完成品の商品)、バイオリンの渦巻きやツマミも再現されていて、とてもきれいでした。何を言っているのかというと、これのことです。

● Handoson オリジナル ペーパークラフト 

美術書もごくたまにしか見なくなって、知らない名前ばかり。それでもあれこれ手にとって見るうちに惹かれたのが「三沢厚彦」。独特の木彫で動物ばかり作る人のようで、しかもたいへん多作家のようです。動物の絵も大胆な筆さばきがカッコいいんですよ。洋書では「Damien Hirst」。ヒルスト? 本の造作や図版の感じや作品の雰囲気からドイツ人かと思いましたが、後できいたらハーストというイギリス人でした。タハッ。立体を作る人です。社会に向けてかなり強い問題意識とメッセージを持っている人のようです。その姿勢がアートとしての表現のしかたとうまく融合しているように見えました。かなり高い本ですが欲しくなり、三沢の本と一緒にレジへ持っていきました。

ところが。今日はあまり現金を持たずに来で、ここでは書籍とCDだけはカード払い不可というのです。しかしお店が取り置きしてくれるというので、Hirstの本だけお願いしました。(三沢の本は今出ているもので、他でも買えそうですから。)そんなやりとりをしていると、そのときのお店のお嬢さんは、なんとHirstのその本を名指しで注文した本人でした。それで、こんなに無知な私でもその本が気に入ったのを喜んで、いろいろ教えてくれました。イギリスでどれくらい有名か、いつどの作品で世に出たか、作品の傾向がどうで、どういう賞を取り、どういう連中と、どういう活動をして、いろいろ物議をかもしている‥‥‥‥等々。すごい! 快感です。さすが芸大アートプラザ!

帰ってからネットで damien hirst を検索すると、ま〜出るわ出るわ。あるブログによると、幅の狭い桟を何段も作ってそこに色とりどりの錠剤とカプセルを並べた(だけの)作品は、昨年のオークションでカタールの王室が1920万ドルで落札したと書いてありました。あまりにもあまりっぽくて、へ〜え。ちょっとつまんないかも‥‥‥‥

続きは本を手に入れてから書きます。





私が気に入った本とは別ですが、amazon.com にあったHirstの本から適当に。"Void""The Agony and the Ecstacy: Selected Works from 1989 to 2004"

あの大日如来像とフランスのお皿


特別公開・8月3日まで。‥‥‥‥アレヨアレヨと今日が最終日。とですから上野の博物館に「あの大日如来像」を見に行きました。本館を入ってすぐ右の部屋で六波羅蜜多寺の鎌倉仏を展示していて、その次の部屋にありました。

ニューヨークのオークションで日本の宗教団体が13億円で落札し、今では所有者の名を冠して「如真大日如来像」という名前でした。あれだけ話題になったし、最終日でさぞや混んでいるだろうと思いきや、博物館は賑わっていたもののそこだけ特別ということはありませんでした。そのためガラスケースの中の仏像をゆっくり眺めることができました。

クリスティーズのサイトやテレビのニュースで見た写真は金色に輝いていましたが、そこでは埃の色をしていて、金色に見える所はずっとわずかでした。照明を落としているからかもしれません。小さいとは聞いていましたが、本当に思ったより小さくて、本当にきれいな如来像でした。微塵の狂いもない完璧な姿、真にうつくしく、静謐の中にありました。少し見下ろす角度になりますが、横顔にとくに見とれました。


栃木のお寺の、そっくりだといわれた運慶仏も並べて展示してありました。こちらはさらに小さく、金がよく残っていました。本当に似ていていて、私にわかる違いは肩に金属の飾り?髪?が垂れている所だけでした。では試作品か?というと、本来はさらに隣に展示してある立派なお逗子に納められているようで、その飾りの見事さを見たら、とても試作品とは思えません。大日如来の図録が販売されていたようですが、帰りに立ち読みするのを忘れてしまいました。

大日如来像を見るだけなら「常設展」の切符でよいのですが、せっかく来たのだし、駅で「フランスが夢見た日本」という19世紀フランスの食器(お皿)の展覧会の切符を買いました。(特別展の切符を買うと常設展も見られます。)しかしこちらの展覧会はずっこけました。友達を誘わなくてよかったと思いました。

19世紀にフランスの高給食器メーカーが日本の浮世絵に憧れて、北斎などの絵をパクッて描いた、というお皿の展覧会です。それなりに目新しい品物を出してきたこと、一部の展示ではどのお皿が誰のどの浮世絵のどこをパクッたかを具体的に図版で示した点、その二つが取り柄でしょう。しかしお皿じたいモノとして大したことがないのが致命的です。どう言えばいいのか、確かによく真似て描いていますが、ただそれだけのことにしか見えないのです。伊万里を見たマイセンやヘレンドの消化と洗練とはなんという違い。そして浮世絵への憧れをどう消化するかという意味ではゴッホやロートレックは、なるほど天才だったなあと妙に納得した次第です。そりゃあ2、3面白いと思うお皿がありましたよ。(背びれを水面に出した鯉が、水中柄ジロリとこちらを見ている絵、あと大根とネズミの絵です。)でも、ずれにしてもこれらはフランスにとってお宝でも、日本人が見てもしょうがないというか‥‥‥‥。

しかも展示数が少ない。こんなのはデパートでやってほしいと思いました。おまけにピンク色展示ケースは不定形で、やたらに大きくて、展示室を狭くするだけです。こんな物にお金を使わず入場料を安くしたらどうですか? しかも一歩入ったドームの真下が売店で、とにかく狭くてゴチャゴチャkして気持ちが悪くなります。表慶館は改装前までは常設展の建物で、切符のモギリも売店もなく、建物の美しさを味わいながらゆっくり展示を鑑賞できる場所でしたが‥‥‥‥ひどいものです。そうそう、それから入口には呼び込みがいて、大声あげてましたっけ。ひどすぎます。

2008年8月1日

神楽坂のクレープ


阿波踊りを見物した後、食事がまだだったらとPさんはクレープ屋さんに連れて行ってくれました。私がはまっているソバ粉のクレープ(ガレット)です。毘沙門天の向かい方の道をちょっと入った所で、その名も「ル・ブルターニュ」。フランス人のお店だそうです。古い建物を改造したのか床も扉もテーブルも「木」が多く、まるで昔ながらのお店のようで、雰囲気も気負いがなく家庭的でした。

Pさんはもう夕飯を済ませたからと、デザートのクレープです。全体にメープルシロップをかけてコッテリした生クリームののったやつです。これもソバ粉でした。味見させてもらったら、こんなに素朴なのに甘くて美味しくて、おやつの原点のようでした。私のはキノコをこまかく刻んで平らに敷き詰めた上にカリカリベーコンが数枚のっています。チーズがとろ〜りとして、やっぱり美味しいのでした。外国人が作るお店ではしょっぱいのが多い印象がありますが、これはちょうどでした。驚いたのは、Pさんはクレープ屋さんで食事するときは、食事のクレープを食べた後にデザートのクレープを食べるのですって。それが普通らしいんですけど。と言いつつ、正直私もそれくらい食べてみたいと思いました。

前にクレープばかり食べ歩いている人のブログで、ラ・フェデリーズのクレープの特記事項として「とても薄い」と書いているのを読んだのを思い出しましたが、ここのクレープも同じくらいだと思いましたよ。ただ、こちらのほうが焼き色が濃く、その分香りがあり、折り返した端っこはパリッとした食感です。(この「パリッ」が問題で、石神井にあるフランス人のレストランのクレープは1種類しかなくて小さくて厚くて堅くて、ナイフで切るのが一苦労で、噛むのも難儀で、本場の味か何か知らないけれど二度とごめんだと思いました。)

私はお酒が飲めませんが、シードルを飲んだら飲めるじゃないですか。以来クレープにはシードルがいいと思うに至り、この日もシードルにしました。このお店にはシードルも何種類かあるようです。お水を一緒に出してくれるのが下戸にはありがたいことです。(7月26日)

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