お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2007年10月3日

読書の秋・ありやなしや

本を読まなくなって十年以上になります。90年代半ばまで猛烈に読みました。毎月3万から5万円くらい使い、アメリカやイギリスからも段ボール箱で取り寄せたものです。人も羨む仕事を辞めてからは考えるために読み読むために考え‥‥‥‥気が狂いそうな思索三昧をやって知りたいことがわかったら、もう何の本を見ても意味を感じなくなりました。実にわたくしは悟りの境地におりましたのです。それはそれとして、本を買うのは稀になり、買っても実用書が専らになりました。ちょうどその頃から老眼が始まり、文字を見ると疲れるし億劫です。老眼鏡を作りましたが、本は読みつけないと読むのがすごく遅くなります。中断すると戻るのに日にちがかかります。かつては毎日1冊読んだものだ、なんて夢のようです。

泣き言にも似た前置きが長くなりましたが、今日はなんとなく本屋さんに寄り道して、珍しく文庫本を買いました。本当はずっと佐藤優の「反省」が読みたいのですが、私の行く先々ではみつかりません。アマゾンならワンクリック、でもあそこも倉庫で健気に本をさばいているのは日払いの非正規雇用者だときくと、アマゾンで買うのは他で入手できない商品に限ろうと思うのです。だいたい本は本屋さんで手に取って買うのが一番です。ともかく店内をフラフラさまよいながら、今日はこんなのに興味を持ちました。


「江戸俳諧歳時記/上」加藤郁乎著(平凡社ライブラリー)

「上巻」しか売っていませんでしたが。春夏を扱っており、今頃の季節の分がありません。どのみち私には背伸びした本です。これは頭からちゃんと順番に読むのもよいでしょうが、傍らに置き折に触れてパラパラめくるという読み方が楽しそうです。そういえば昔面白い江戸川柳を教わって、しばらく岩波文庫を近くに置いていたことがありました。こちらは少々上品です。江戸の俳句を味わう水準にありませんから、柚の花のことを「ゆのはな」「はなゆず」「はなゆ」と呼ぶのを知り、紫陽花の名の由来など読むだけで満足です。


「完本 文語文」山本夏彦著(文春文庫)

この名前を見て思わず手にとりました。ずいぶん久しぶりです。昔読書家だった頃に信頼していた書き手の一人です。こういう物事のわかった大人がほぼ絶滅した今は文化の廃れた悲しい時代だと思います。この人は樋口一葉(5千円札)の文章を絶賛していましたっけ。私はここ数年急速に広まった広告屋とマスメディアの共謀のような出鱈目な日本語が大嫌いです。人格などかなぐり捨ててガラス窓を叩き割ってわめき散らしたいくらい大嫌いなのです。(このブログでも私は密かなる抵抗を試みており、こんな文章ではありますが、どんなに普通に使われていても嫌いな言葉や言い回しやかな遣いを断固拒否して書いています。)ありし日翁の嘆きはいかばかりであったか。今あらためて、思えばよき時代を生きた気骨ある親父が文語について語るのをきき、冷静を保ちたいと思います。初版は2000年5月のようです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

かきくもり あやめもしれぬ おほそらに ありとほし をおもふべしやは

くずぽん さんのコメント...

匿名さん様、コメントありがとうございます。
(中略)
今後ともよろしくお願いいたします。

コメントを投稿

ブログ主のお店 KNIT-RIT FABRIC の宣伝 アメリカ版

See other gifts available on Zazzle.