お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2008年4月1日

〈くめ〉で日傘



麻布十番商店街の〈久保〉の前にはいつものようにお洒落なボタンが出ていました。でも作るのはセーターで実はボタンはあまり使わないから今日はやめにして、隣の箱のソックスが気になりました。透ける地に黒の模様があるシックなものです。そのときふとガラス越しにお店の中へ目をやると‥‥‥‥バチック! バチックの服がずらりと並んでいました。え、ここはもっと今ふうのクールでモノトーンでシンプルな服の高級ブチックではなかったか? いずれにせよそうとう高価でしょうが入らずにいられません。中にはお客さんがいて、日傘を広げています。いきなりなんと素敵な。柄違いが一本ずつ数点あり、私も見せてもらいました。

前のお客さんが羊皮のバッグを買って帰った後、お店の人からいろいろ聞きました。秋冬は和の素材で作るが、夏に向けてはバチックなのだそうです。生地は店主でデザイナーの久保さんがインドネシアの職人さんたちに注文したもので、各地の伝統的な柄もお店のオリジナルもあるとのこと。木綿の生地の下処理に始まり、昔ながらの手間のかかるやり方を守ったバチックだそうです。いずれもかなりオシャレ度の高いデザインに仕立てた、ブラウス、ジャケット、ワンピースなどです。しかし着てみるとすんなり体になじむ形をしており、柄の使いかたが生きていて、いいんですね。中でも往年のオートクチュールのような大きな襟、大きな本鼈甲のボタン、丈の短いオーバーブラウス(兼ジャケット」は左右非対称の柄使いが本当に洒落ていて、実は自分にちょっと似合う気がしました。7万円ですが。絹にろうけつ染めを施したジャケットは10万円以上。しかし、わかってます。手作業で作る本物のバチックは信じられないくらい手間のかかるもので、そういう値段のものなのです。内心思うのでした。時間と根気のいる伝統的な手仕事は工業化に押され、やり手が減り廃れていくのが万国共通の傾向であるなか、この金額を出しても求める人がいるから現地の技術も維持されるのだと。さらに、そういう生地をこの金額に見合う製品に仕上げるデザインとは、なるほどこういうものなのだなと。

ひとしきりお喋りして、試着もさせてもらいながら、やはり一番気になるのは日傘でした。ろうけつ染めの日傘といえば私が幼稚園にも上がらない頃、母親が使っていたのを懐かしく思い出します。青地に白のロウを割ったような模様、持ち手は黒。かつては夏の簡単服に布団側に暖簾にテーブル掛けに‥‥‥‥ろうけつ染めや今でいうバチックを普段の暮らしのあちこちで見ました。昭和30年代の話です。今ではあまり一般的でない分だけ本物志向になり高級になり高価になったのでしょう。こんにちではむしろヨーロッパ経由のペイズリーやチンツのほうが日本製もあり普及しています。(しかし一番多いのは無地の服ですね。いつの頃からか、淋しいくらい無地ばかりです。)

日傘の柄は木材で軽く、傘の開け閉めがなめらかです。竹の持ち手は節がちょうど指に合って持ちやすく、何より柄が素晴らしい。表裏両面にロウを施し同じ手間で染めるため、傘の内側から見てもとてもきれいです。もちろん日本の傘職人さんの手によるもので、不都合があれば修理してくれるそうです。というわけで、この贅沢な日傘を買ったのでした。白のワンピースにこれをさして歩いたら昭和の黄金期の女優さんのよう(な気分)。夏の日差しが待ち遠しい!(3月31日)


(追記:2011年8月22日)
なんたる大間違い! お店の名前は「くめ」>/b>でした。その後も何度も行っているのに、ここで間違えたことに気づきませんでした。これまで見てくださった方ごめんなさい。「くめ」さんにもごめんなさい。
なおお店情報は以下のとおりです。

Gallery くめ(お店紹介のページはこちらです。)
港区麻布十番1の5の20
電話 03−5411−5200
火曜日定休


(azabujuban)(kubo)(batik)(textile)(parasol)

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