お買物のはなし・新旧おりまぜスローにやります

2007年7月9日

飯島和久さんのコンサート


靴作りを再開した友人Iは生物部の後輩のAさん(飯島文子さん)とずっと親しい交流があり、ときどきその人の話をしてくれるのですが、私にはそれが人生というものの一つの理想、今という時代における一つの到達点に思えてなりませんでした。つまり‥‥‥‥「羨ましい」。八ヶ岳の麓で犬と一緒に畑を耕す健康的な暮らし。してその正体はフルートの演奏家であり、実はご主人も息子さんもフルート奏者という夢のような音楽一家です。おまけに息子さんはパソコンに強く写真がものすごく上手い! 5月の同窓会の後の宴会では私の後輩にあたるSくんのおかげで思いがけずAさんとお喋りする機会があり、こんなにパワフルで魅力的な同窓生の演奏をぜひ聞いてみたいと思いました。

そのとき教わったご主人の飯島氏のホームページを先日久しぶりに訪れたとき、「飯島和久と11人の仲間たち」というコンサートを見つけました。Aさんと息子さんも出演しますし、プロの演奏家の多いお弟子さんたちと一緒に「フルートのオーケストラ」をやるという、滅多にありそうにない趣向です。しかも場所は横浜。さっそくAさんに連絡をとりました。ところがIはどうしても用事で行けないと言い、おたがいに残念でした。日も迫っていましたが、他の同窓の音楽好きに声をかけると土曜日は仕事だと言い自分のイベントがあると言い、どやつもこやつももまったくしょうがありません。しかしこれを逃す手はありませんから、7月7日は一人で東神奈川駅下車のかなっくホールに行きました。

私には知らない曲の多いプログラムでしたが、演奏の間ごとにフルートや音楽について飯島氏のお話があり、期待どおりのアットホームで親しみやすいコンサートだったんです。いろいろな時代からの選曲で、フルートだけなのに飽きることがありません。私はやっぱりバロックのアンサンブル(ボワルモルティエ「五重奏」)が一番好きですが、12音階の難解な現代曲かと思われるソロ(サンカン「ソナチネ」)にも聞きほれました。また、伴奏のピアニストがすごく上手いと思いました。

「フルートのオーケストラ」では飯島氏が指揮をとり、フルート9本と最高音にピッコロ1本、最低音にバスフルート1本を加えた構成になりました。バスフルートというものを初めて知りましたが、傘の柄のようにカーブした形をしています。それをAさんが吹きました。金管といってもラッパと違い、フルートの折り重なる響きはあくまで軽やかです。(ビゼー「衛兵の交代」、ドビュッシー「月の光」)。そこでは横一列に立って並んだ演奏家達が色とりどりのドレス姿に華やいでとてもきれいで、これもフルートならではの特記事項だと思いますよ。アンコールはおそらく面目躍如たるものでしょう。題名はわからないのですが、調子のよい曲にコミカルな演出があって、それが可笑しくてみんな笑い出してしまいました。私はツウですからこういう楽しいコンサートが好きです。

ところで、心地よい音楽に身をゆだねればフワフワいろいろ妄想が広がるものです。Aさんは貫禄を感じさせる黒のドレスがよく似合ってきれいでした。アップにした髪から全体にかけてのシルエットがエリザベス朝の貴婦人を連想させるのです。そういうお母さんの姿を見ている諒くんは明らかに絶対に私と違う、と思いました。私に大正生まれの母親のドレス姿はありえませんから。そしてお父さんのお弟子さんたちのドレス姿にも囲まれて、そういうのがあたりまえの感覚は絶対に私と違うし、他のたいていの男の子達とも絶対に違うと。ドレスにこだわるわけではありませんが、それは文化環境の一つの象徴というものです。また、退場のとき女の人を先に通す仕草には、小さいときからステージマナーを教育されているのだろうと思いました。違う。違う。う〜ん、違う。

また私はリコーダーが好きで習いにも行きましたしよく聞いたものですが、正直なところフルートはジャン・ピエール・ランパルのヴィヴァルディくらいで、聞くことに慣れていません。しかしこの日フルートを聞きながら、なんとなく「この人達はいい人達なのだろうなあ」と思ったのです。その音色にあらためて「吐く息で作る音」を意識しました。息とはその人の体の中から出てくるのですから、その人の中身と同じかもしれない、と。つまり、敢えて極端に単純化するなら、きれいな人の息はきれいで、きたない人の息はきたないということがあるのではないか。そしてきれいな人のきれいな息の作る音はきれいで、きたない人のきたない息の作る音はきたないということがあるのではないかと。(なにか西洋の寓話に出てきそうな対比です。)もちろん「きれい」「きたない」は沢山の説明を必要とする言葉ですが。でも息が奏でる音楽には楽器や技術を超えた演奏家の内部が本質的に漂う、という話ならありえそうに思います。その仮定に基づいてちょっと調べてたり集中的に音楽を聞いてみたら面白いかも、などと思ったのです。

「フルート吹きの平日」(飯島和久さんのホームページ)
このさいフルートのお勉強

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