三波春夫の「歌芸の軌跡」
今週の月曜日の夜、テレビの3チャンネルの「こだわり人物伝」で再放送をやっていました。森村誠一が三波春夫を語るシリーズで、以前見て感激した番組です。三波春夫の、「光源」ともいうべき天性の明るさについて、その声の素晴らしさについて、また生い立ちやソビエト抑留について、あるはそれを聞くお客について等々、ああこういう人を本当の「国民歌手」というのだと思ったものです。(「国民的歌手」の「的」は不要ではないでしょうか。)
「東京五輪音頭」も「世界の国からこんにちは」も、私はその時代に聞きました。東京オリンピックのときは小学生で人並みにテレビを見ましたし、大阪万国博覧会のときは中学生で、強い反感を抱き、万博関連のテレビも記事もけっして見なかったものです。とはいえ今となってはいずれもニューズリールの中の、この国の古ぼけた幸せな過去のようです。しかしそのテーマソングはというと、何も変わらず、まったく色あせず、今もここにあるんですね。
番組では泉麻人(だったと思いますが)がちょこっと出て、「三波春夫の歌には懐かしさがない」という言い方をしていました。少し奇妙な言い方ですが、なるほど言葉にすればそのとおりだと思いました。普遍的であり、時空を超えて過去にならないという感じです。それはたぶん三波春夫の歌が(とくに誰でも知っている大ヒット曲は)歌詞、曲、演奏、声、歌い方、そして誰の目にも浮かぶ三波春夫の衣装や歌いっぷりを含めた全てが混成する、一つの完成された様式を持つということでしょう。
もちろん若い頃からのファンではありません。欧米のポップカルチャーに心酔する60年代70年代には三波春夫や美空ひばりといった歌手は悪趣味の権化のように思いました。しかし年をとって聞けば「本物」とはかくあらんやとわかるのです。そしてわかったことを喜びます。しかしこの国ではこういう高度な大衆文化というものは既に絶滅しました。
月曜日の夜に番組を見て、改めてこういう歌は「一家に一枚」必需品だと思い、そのままネットで注文しました。それが水曜日の今日の午後には届きました。(アマゾンでもこんなに早いことがあるんですか。)
DVDも欲しいのですが今回はCDにしました。2枚組で、1枚目は「ベストヒット歌謡曲集」20曲、2枚目は「長編歌謡浪曲集」8曲。いや〜、素晴らしい。
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