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2009年1月23日

高岩仁監督・映画上映会

高岩さんの映画上映会があるそうです。それが…………「追悼上映会」。1年前に亡くなったのですね。


ベンジャミン・フルフォードの講演会の受付に置いてあったビラを手に取ったとき知りました。とまれ上映会の予定を転載します。

     高岩監督ありがとう!映画祭
日時: 2009年1月29日(木) 
    開場 午後2:30/開演 午後3:00
場所: 国立オリンピック記念青少年総合センター 
    カルチャー棟小ホール
参加費:会員:2000円/学生会員:1000円(当日でも会員になれます)
    一般:3000円/学生:2000円

<上映作品とスケジュール>
3:00「戦争案内」(70分) 
4:30「教えられなかった戦争 フィリピン編」(112分)
6:45 高岩監督作品の制作裏話(西浦昭英さん)(30分)
7:15「教えられなかった戦争 第二の侵略——開発・投資・派兵 フィリピン」(87分)
● 上映会のビラはここにあります(PDFファイル)高岩さんのプロフィール、作品の紹介、会場案内、主催者についてはビラをご参照ください。


今は昔、学生時代から就職してしばらくの頃まで、ドキュメンタリー映画の監督達と交流がありました。1980年をはさんだ何年かです。高岩さんは私が親しくしてもらっていた監督(滝沢さん)のお仲間で、何度かお会いしたことがあります。六本木の集合住宅内に作った共同の編集スタジオで制作中の映画のラッシュを見たり、四谷の、映画や放送関係者が過去のテレビ番組を見ることができる施設へ連れていってもらったときだったと思います。ちょうど「朝鮮通信使」が完成した頃。『文部省特選』がとれたと皆で喜んでいました。(「特選」か「推薦」かでその後の営業が大違いだったからです。)ひと仕事終えれば一杯やりました。高岩さんが東ドイツを取材したときの体験を、ちょっと自慢気に披露したのを思い出します。今思えば40代のおじさん達。そこにお酒も飲めないカチカチ頭でトンチンカンな二十代の私がいて、いろんな話を聞かせてもらいました。

その頃の私はそこらじゅうに溢れるアメリカ文化とはまったく違うソ連/帝政ロシアと東欧の文化にとても興味があって、あれこれ調べたり小説なども探しては読んでいました。しかしマルクス主義とか共産主義とか、政治だの経済だの、わかろうとしてもなかなかわかりませんから、高岩さんのような気骨ある左翼を目の前にすると、何か教えてもらおうと機会をうかがっていたものです。あるときどういう流れだったか、私がパステルナークがノーベル文学賞を辞退した話を持ち出すと、あっさり「あれは西側の宣伝だから」と言いました。そんなことを聞くのは初めてでしたからとても驚き、その後ずいぶん長くその意味を考えました。(今では簡単なことですけどネ。)こうして書くと何でもない話に聞こえるでしょうが、長く物事を考えるきっかけを与えてくれる言葉とはとてもありがたいものなのです。

高岩さんは東映で映画の仕事をしていましたが、有名な労使紛争で辞めてからはドキュメンタリー映画を作り、じみーな社会問題に取り組んだのでした。また作家・檀一雄とは異父兄弟で、姪にあたる檀ふみの芸能界入りに影響があったといわれます。最後に会ったのはたぶん1981年、日比谷図書館でした。地下の食堂でお昼を食べて上がってきたら偶然お見かけしたのです。でも私は職場に戻らねばならず、あちらもお仕事があったでしょうし、挨拶しただけでした。

こうした交流を通じて私が教わったのは「知ること」の重要さです。これは滝沢さんにした質問ですが、土本典昭の「不知火海」を見た後に「こういう映画を見るとどうしていいのかわからなくなる」と言いました。つまり私はこの映画に胸を打たれ、自分も何かしなきゃいけない気がしてじっとしていられなくなる。でももしこの問題に関わっても、別の問題を知ったらまたじっとしていられなくなるだろう。もっと重大な問題を知るかもしれない。でも一人であれもこれも出来ない。それなら、どうしてこの映画を見るのだろう?…………というような。すると映画を作る立場から「我々は知ってもらえればいいのだ」「知れば変わるから」と言いました。

それは何か、拍子抜けするような返事でした。知ったことをどうすればいいのかときいているのに。たとえば上映会の出口で「よくぞ理解した。一緒に闘おう。さあここに署名するのだ。来週はデモ行進だ」と言われるなら、参加するのか断るのか、ずっとわかりやすいのに…………。でも30年たち、今はわかります。緊急な問題提起は別として、真面目な映画ほど見る人にそんな単純な行動を求めていないのです。一つを知り、考え、それを糸口に一人一人が関心をもって更にいろいろなことを知って考え、少しずつ視野を広げること。そうすれば実際に、日々の生活の中から判断や選択が変わっていくものなのです。何が良いことか、何がつまらないか、何が問題かがわかるようになります。(厳密に言うならわかっていないかもしれませんが、少なくともその時点での自分の意志を持つことができます。)行動したいならむしろそれから。大切なのは何が起こっているかに気づく目や、知ろうとすること、自分で正しいと思うことを選択する力を持つことで、それは凡人にとってほとんど一生の仕事です。でもそのほうがいい。と私は思います。

人に本当にわかってもらうには時間がかかる——でもそのつもりで、たぶん高岩さんも映画を作ったのだと思います。その後のソ連の崩壊、冷戦終結、それからのアメリカ、あの時代をどう見てきたのでしょう。今回上映されるのは1995年、2002年、2006年制作のものです。こうして作品を見る機会が来るとは思いませんでした。戦争もののドキュメンタリー3本立はいささか重いのですが、ぜひ見に行こうと思います。

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