ロン・ポールの続き
そりゃ私だって2004年の民主党大会でバラク・オバマが演説するのを聞いたときには思わず涙が出ましたよ。何の話だったか忘れましたが。そのとき番組の解説者が「将来の大統領候補といわれている人です」と言いました。「へーえ、人知れず人材が育っているんだな」と思いましたが、ヒョロリとした若造で、まさかいきなり次の大統領選に立候補するとは思いませんでした。その後党の指名を得るまでのオバマ対ヒラリー戦は日本でも(表面的に)よく報道されましたが、たまに見ながら、オバマという人は「いつかは大統領になる」という思いで試しに立候補してみただけなんじゃないか、こんなに盛り上がって実は本人は戸惑っているのじゃないかしらと(根拠なく)想像しました。それがアレヨアレヨと……とうとう現実の大統領……になるのですね。なんだか背広が似合わない人だと思います。
アメリカ時間11月4日の夜遅く、当選が決まったバラク・オバマの勝利演説を聴くためにシカゴの広場に予想を遥かに超える20万人が集まったという映像をテレビで見た時……こりゃヤバイと思いました。あの大群衆は……あそこまでいくと恐怖です。(ロックのスーパースターでもハイル・ヒトラーでも大群衆は恐怖です。)このときから私はオバマとオバマ支持者を敢えて疑いの目で見ることにしたのです。
今度の大統領選も少しの関心がありました。アメリカには黒幕がいて誰が大統領になっても同じという噂はずいぶん昔からあるものの、黒人、ご婦人、ご老人という前代未聞の取り合わせで、どれをとっても新機軸!という感覚でした。(日本の報道は各人の主張や日本への影響の違いを分析するものではないので、じっさい何も判らないのです。だからといってCNNにかじりついたり自分で調べるほどの興味はわきませんでした。)しかし日本でも放送している「デモクラシー・ナウ」というアメリカの独立系メディアの番組で、共和・民主両党の主立った候補者の政策顧問は揃いも揃って戦争ドンパチ派、いつでも外国で市民を殺しまくる意欲モリモリの人ばかりだというレポートを聞き、すっかり冷めました。
● 政治を変える一票? 日本版「デモクラシー・ナウ」、日本での放送は2008年1月3日。ビデオは日本語字幕付き。(ちょうど1年前だったのですね。)
ついでにこんなのもあります。お金、権力、足のひっぱりあい……その他もろもろ。
● あなたは大統領になれない——民主主義の驚くべき障壁 つまり誰でも大統領になれることが建前のアメリカにおいて、本当はどういう人が大統領になれるのか。日本版「デモクラシー・ナウ」、日本での放送は2008年8月28日。ビデオは日本語字幕付き。
現にオバマはイラクから撤退するがアフガニスタンにはリキを入れると言っています。ともかく戦争はやめとくれ、軍事介入はやめとくれ、日本を巻き込まないでくれ、そういう素朴な思いでいっぱいなのです。ですから先月たまたま、「誰も戦争なんかしたくない」「韓国からも日本からも、世界中から米軍を撤退させる」ということを平和主義や日和見なんかじゃなく、「憲法主義者」として主張する共和党の大統領候補(ロン・ポール)がいたことを知って驚きました。合衆国憲法を尊重し、共和党の基本にもとづいた「小さな政府」を標榜し、医師でありながら経済に強く、今日のアメリカの危機を早くから警告していた人でもあります。この人の話を聞くと共和党の本来の立場とその意義が見えてきます。しかし正論であるがゆえに却って「どうして共和党から立候補するのか」と問われたり、「(所得税を徴収する)IRSの廃止」「(お金を作る)FRBの廃止」をはじめ、普通の人々が普通に望むことばかりの超勇気ある公約によって、はじめから大統領になれるはずがないのかもしれません。
慎ましいネガティブ・キャンペーンといえばいいのか、困った顔したオバマの写真1枚の、とっても簡潔なロン・ポールの応援ビデオをみつけました。国会議員としてのオバマの投票行動が実は人々にとってあまり好ましいものではなかったことと、「チェンジ、チェンジって、あんた一体何をチェンジするの?」「…………」、オバマと違ってロン・ポールはしっかりしてるのヨ、という内容です。
(投稿者のコメント:An attempted non-bias voting record comparison between two candidates, Barack Obama and Ron Paul. / Please note "oppose" is defined as: 'To take a stand against: buck, challenge, contest, dispute, resist'. / Also this is essentially bias towards Obama. He was not in the Senate to vote against the Iraq War. Sorry, I thought he had. Also he was not there to vote on the first Patriot Act, but he did vote for the 2nd. / Ron Paul is also for keeping the internet free. Freedom is popular after all! ;) )
大統領選の広告ビデオを一つ。「Ron Paul: A New Hope」
直接YouTubeで見れば見た人のコメントが興味深いし、関連動画がイモヅル式です。→ ここ。
本選挙に圧勝したオバマの支持率は80%といいます。え? ちょっと待って。
ジョージ・ブッシュはイケイケの黄金期に支持率が90%でした。ということは……(算数苦手で間違っていたらすみませんが)最低でも70%は数年前に911に踊らされて星条旗を振って「USA! USA!」と叫んでいたのが『Yes we can ! Yes we can !」に替わっただけ……?! そう思うと、ともかく熱い大衆というものがオソロシクなります。(またオバマ本人の出方もコワイのです。今は少なからぬ日本人も固唾をのんで就任演説を待っているんじゃないでしょうか。そこで万一国家破産でも宣告された日には日本の米国債がすべてチャラ…… ところで自称予言者・副島隆彦は「オバマは2年で失脚、後をヒラリーが次ぐ」と断言しています。ううむ……)
バラク・オバマといえば、インターネットを使った選挙戦、小口で広くお金を集めたことがよく話題に出ます。だから「草の根」だと。でも(上に紹介したデモクラシー・ナウのビデオにあるように)オバマの献金の主な中身はウォール街や巨大企業で、小口の献金に限れば過去のハワード・ディーンの足下にも及ばない額でした。そもそもそういう話なら本当はロン・ポールでしょう。1988年にも大統領選に立候補したそうですが、20年間下院議員をやっていても未だにアメリカ人が「誰?」というくらい知名度の低い候補者だったのです。宣伝するお金もない。しかしひとたびインターネットに情報が流れると若い人達のあいだにみるみる支持を広げ、大手メディアに乗る機会が少ない分YouTubeやMySpaceなどネット上で選挙運動がわき上がり、それはロン・ポール自身が予期しなかったことのようです。2007年6月にはネット献金でオバマ/クリントンに次ぐ430万ドルを3万7000人から集め(一人あたり116ドル/ネット献金は25ドルから)、12月には24時間に600万ドル以上を集め、それまでの24時間で集めた記録、ジョン・ケリーの570万ドルを抜きました。(こんなにお金のかかる選挙って問題だと思いますが。)
そうした驚きを伝えるアメリカPBS(公共放送)の番組のビデオがありました。ネット上の投稿サイトの動画は選挙の応援が多いのですが、これは報道番組がロン・ポールの選挙戦を取材したものです。(28分ほどの番組中の頭18分ほどです。)いかがわしげな白人主義者の支持のことも出てきます。日本のメディアは無視しましたが、けして泡沫候補でなかったことがわかるでしょう。
(さらに言っておきたいのは、彼らの知ったことではない所で、つまり彼らのインターネットを使った選挙運動が終わった後の外国にあってさえ、現にこうして訴える力を持っていることです。普段から多くのアメリカ人と直接かかわるような生活をしていない私には、911以降のアメリカにシンパシーを感じる理由はありませんでした。理不尽な要求ばかりつきつけられるし、つねに良くない話題のほうが説得力をもって響きます。しかしここにきて、こういう政治家がいること、それを支持する人がいることを知って希望はあるかもしれないと思いました。熱をおびた大群衆ではなく、話せば理解しあえるかもしれない個人の存在を感じ、もっと知りたくなります。ここまでを含めて「インターネット政治」だと思います。すごいことです。)
● Ron Paul and Internet Politics PBSの番組『Now」のサイトから。
● Ron Paul and Internet Politics 「Now」のビデオ。2007年12月14日放送
もう一つ、(以前はNHKのBSでも放送していた/今もやってる?)ジム・レーラーの「News Hour」の番組サイトから2007年10月12日放送のインタビュー。外交、銃規制、中絶の是非など、ひととおりの問題にふれています。文字版ですから辞書を引きながら読めます。(音声版、動画版もあります。)
● Paul Envisions Smaller Government, Less Global Intervention
というわけで、こんど読みたい本はこれ。いいことばかりじゃないかもしれないから、この人の考えをもっと知りたいと思います。
The Revolution -- A Manifesto
Ron Paul著
Grand Central Publishing刊/2008年4月発行/192ページ
amazon価格14ドル28セント
ロン・ポールの(大統領選の?)マニフェスト。これはハードカバーですが、これからペーパーバックが出る予定だそうです。え〜、どういうこと?! 党の指名に至らなかった落選候補のマニフェストですよ。20日には支持率80%のオバマが就任するというのにですよ。……今から読みたいという人がよほどいるのでしょうか。惜しむべくは72歳……4年後には76歳、大統領になったら一期満了で80歳……(あと10年若かったら……)
翻訳本はありませんが洋書として日本でも売っています。日本のamazonには「こういう人がアメリカ大統領だと日本にもいいのじゃないか」という内容の読者レビューがありました。現在アメリカのamazonで書籍全体の208位。(すごいことです。/あ、勿論本が出たときはニューヨークタイムズのベストセラー1位だったそうです。)読者レビュー数は746、92%が星5つ。一番新しいのは1月3日付で「ロン・ポールが僕たちのリーダーであろうとなかろうと、この本は僕たちが何処へ行くべきかを明確に示している」。一方星1つの意見は「他の人が気づかない問題点を指摘するのはいいが解決策が単純すぎる」「合衆国憲法を尊重するのはいいが、時代の変化とともに加わった修正を無視するのはおかしい」といった感じでしょうか。
オバマのスピーチ本、流行っているそうです。町の本屋さんでも平積みです。でも私が読むとしたらこちら。
オバマ 危険な正体
ウエブスター G ターブレイ著、太田龍訳・監修
成甲書店/2008年11月29日発行/320ページ
1995円
ひゃ〜、太田龍先生の訳ですか。値段、高すぎますよ。amazonは便利ですがデータが残りますから、こういう本や五次元文庫あたりの本ばかり注文すると、万一怖い時代が来たときに「思想的偏向者」としてマークされちゃうんじゃないかと心配です。買うならできるだけ大手書店で不特定多数にまぎれて買いたいと思います。(買わないでしょうけど。)アメリカには他にも批判本があります。たとえばこれ。
Obama Nation -- Leftist Politics and the Cult Personality
Jerom R. Corsi 著
Thredshold Editions 刊/2008年8月1日発行/384ページ
amazon価格18ドル48セント
アメリカのamazonで星3つ半ながら、読者レビューの数は現在679。ざっと見て「私はオバマに1票入れたが、投票前にもっと知っておくべきだった」「誰もが読むべき本」等々。一体何が書いてあるんでしょう? 今度の選挙ではマイノリティーや若いモンなど、これまで選挙をしなかった人達が多く参加したと言われています。そういう人達の支持があってのオバマ大統領だと。でもそういう人達はきっとブッシュ政権にうんざりで、最初から民主党、最初からオバマやヒラリーという初の非白人や初のご婦人に舞い上がっちゃって、最初から彼らのことしか見ていなかったんじゃないでしょうか。想像に難くありません。
まあ、どんな人物であれちゃんとやってくれればいいんです。でも何をやろうとしているのか、肝心のこれからの政策にぜんぜん興味がわきません。オバマという人にハナから魅力を感じないから勉強する気がしないのです。日本ではオバマ大統領歓迎ムード一色ですが、あんがい後悔しているアメリカ人がいるのかもしれませんよ。
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