「ならず者の経済学」
ならず者の経済学——世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰か
ロレッタ・ナポレオーニ著、田村源二訳
徳間書店/2008年11月刊/1800円
「経済学」というものの、普通に「ノンフィクション」です。書き出しはこう。
1990年代、デモクラシーという名のウイルスが全世界に広がった。この「自由をばらまく病原体」はソ連崩壊によって解き放たれたもので、その後10年のうちに、世界の民主主義国家の数は69から108に増えた。何十年にもわたって民主主義という病にかからないよう予防接種を受けてきた何百万人もの人々が(中略)こぞって、ついにそのウイルスに感染してしまったのだ。(読み始めたばかりですが、面白そうです。)歴史的に時代の大転換=政治が経済を制御できなくなった時には「ならず者の経済」が興隆してきたし、今はまさにその時にあるという視点で書かれたもの。冷戦の終わり+グローバル化の世界で「ならず者」達が「大活躍=大もうけ」する一方で、世界中の普通の人々がいかに悲惨に目に遭っているか。しかしお金持ちの先進国が貧乏な後進国から絞り取ることや暗躍するギャングの話にとどまらない所が白眉です。アメリカが破産すること、日本がマグロを食うこと、中国がマンホールの蓋を盗むこと、政治が大衆を怖がらせること…………「ならず者」が私達の身近にあることと、私達じしんの問題として考えるべき素材をたくさん提示します。
最後は「『ならず者経済』に対抗するイスラム金融」という章で、著者は欧米が主導してきた(そして破綻した)資本主義が学ぶべき点を指摘しているようです。この章を先に読みたくなります。イスラム金融は利息を取ることを禁じたイスラム法に則って工夫に工夫を重ねたたやり方で行なわれているのですが、イスラム人口10億人の中で近年急速に発展しているというのです。今の経済危機を語るとき、しばしば「マネー」の別のあり方が議論されます。その一つにかつてNHKの番組でミヒャエル・エンデが提唱したような「地域マネー」があります。しかしこの本を読むと所詮は旧ソ連の「ルーブル」が小さくなっただけに見えます。(地域の外では旧来の銀行の仕組みを必要とするからです。)このブログでも引用した動画の「Money as Debt/お金=借金」を見ると、経済が永遠に成長しなければ成立しないような仕組みになっている原因は「銀行の利息」なのかも?と思い始めています。イスラム金融ではその利息がないのですから、とても興味をおぼえます。(1月24日)
● NHK/BS特集「エンデの遺言」 1999年放送(直接関係ありませんが上で引用したのでリンクしておきます。)
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