上野あたり
近頃上野づいています。興味のある展覧会はなるべく見ようと心がけて以来、おのずと上野へ行く機会が増えました。ひところは(十数年前?)お花見の通りから広小路に出る階段のあたりはバングラデシュの(ときいていましたが)男の人がいっぱい群がっていて、悪い人達ではないでしょうが異様な感じで通るのが恐かったものですが、今はそんなこともありません。
どこの町でも何度か行くと、最初は用事を済ませるだけでも、だんだん自分の楽しみ方が見えてきて、もっと知りたくなったり好きになったりするものです。私が歩くのは上野公園が中心で行動範囲はまだ狭いのですが、上野は国立の博物館や美術館、動物園、東京芸大をはじめ文明開化以来お上が主導してきた権威ある文化を担ってきた場であることが他の町と決定的に違うと思います。それだけにバブル時代とバブル後の「町の変形」のようなものが少ないし、公園で炊き出しを待つ人達やアメ横や猥雑なゴチャゴチャとの兼ね合いを含めて、昔から続く「日本」がまだ深く残っている風景にどこか安心します。それは、この町が好きかどうかよりも、何かよりどころに似た感覚です。
また、小さい頃に父親に連れられて、お絵描き教室で先生に連れられて、あるいは高校の放課後、展覧会を見に行った頃と同じ建物、同じ風景のあることがどれくらいうれしいか。美術の牙城としては、途中で都美術(東京都美術館)の建物が新しくなったし、去年は公募展が都美術から去って六本木の新国立美術館へ移ってしまって春と秋の風景を失なったようで残念ですが、私自身はあまり公募展を見ないのですから我慢することにしました。
先週上野へ行った帰りに買物をして、ひと休みしようと商店街で喫茶店を探していたときです。狭い路地に小さいお店がゴチャゴチャ並んでいて、いい感じだなあと思いながら‥‥‥‥ふと気がつきました。この町にはアルファベット文字がない! ほとんどないんです。入った喫茶店はナントカという外国語の名前でしたが、もちろんカタカナ表記です。いや〜、日本の文字の看板ばかりの商店街、いいものです。こうでなくちゃと思いました。さらに、いたる所に国立博物館の展覧会の広告がぶら下がっているこの感じ、上野ならではですよね。(写真を撮ったのに、なぜかカメラに残っていません。今度行ったとき撮りなおします。)
ところで上野には天然温泉があるんですよね。動物園の後ろあたり、「水月ホテル鴎外荘」という所で、森鴎外の旧宅を宴会に使えるし、宿泊施設もある旅館です。日帰りプランもあります。「女同士でもハダカはイヤよ」という友達ばかりでままなりませんが、本当はこういうのに行きたいんです。宴会だけは一人じゃできませんからトホホです。
● 水月ホテル鴎外荘 レディースプラン
さて、昨日は奏楽堂で演奏会があり、当日売りもあるというので出かけました。木管と打楽器の曲だそうですが演目は何でもよくて、あの明治の建物の中で音楽の演奏を聞くという体験に長らく憧れていたから、いい機会だと思ったのです。ところが時間になっても門は閉まったまま、窓の明かりも灯りません。どうしたことかと周囲をウロウロするうち、やっとわかりました。なんとそそっかしい、奏楽堂は二つあったのです。公園にある木造の奏楽堂は「旧奏楽堂」で、昭和62年に芸大の構内から移築したもの。演奏会があるのは現在の「奏楽堂」で、現在芸大構内にある施設なのでした。建物が目当てだった私は行き場を失い、奏楽堂の前にいくつも並んだベンチの一つに腰をおろし、建物を眺めました。夕風がここちよく、犬の散歩などしているご婦人が、私の目の前でお友達に会って楽しそうに立ち話を始め‥‥‥‥そんな光景を見ると、このあたりの木造アパートにでも住めたらなあと思いました。(そういえば死んじゃったTさんはずっと入谷の人間だったっけ‥‥‥‥ どんな所かも知らないままでした。)
(光っているのは金属製の案内板です。)
● 旧東京音楽学校奏楽堂 建物の見学やコンサートの案内など
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